こんにちは!ライターのリナです!
今回は、淡路島のいいところがぎゅっと詰まった『グリナリウム淡路島』の代表・大森さんに取材させていただきました😊
ピクニックができるいちごハウスや、目がキラキラしちゃうようなスイーツ🍨🍓
さらに、ローカルの良さなど気になる内容が盛りだくさんの内容になっています✨
ぜひ最後までご覧ください!
農業を始めるまで
ー大森さんが農業に興味を持ったきっかけを教えてください。
高校のときの生物の授業が好きで、そこから始まりました。植物や生物は複雑ではありますが一つ一つのサイクルが機械的に動いていて、それが外部要因に細かく反応する。生物ってすごいし、面白いなと思いました。
ーそこからどのように進路を決められたのですか?
生物の分野で仕事をするとなると、現場で作業をする農業系か、白衣を着てフラスコを回すような研究職のふたつが浮かびました。大学では農学部か理学部のどちらに進むか悩みましたが、みんなが「このままだと日本の農業はダメかな」と言っていたので、農学部に決めました。天邪鬼なんです。
ー農学部に進学後はどのようなことをされていましたか?
インドネシアのジャングルに生えているヤシの木が研究テーマだったので、シンガポールから赤道直下の島に調査をしに行っていました。地球上で太陽に一番近い場所が赤道。電気も通っていない場所でのプランテーション開発の調査は面白かったです。あと、高知で乳搾りのバイトもしていました。家と学校の間に牛舎があって、朝5時におばあちゃんが待っているんです。行くとすごく喜んでくれました。昭和か!みたいな話ですよね!
サラリーマン農業での経験
代表大森一輝さん
ー以前はサラリーマン農業をやられていたとお伺いしましたが、そのきっかけを教えてください。
学生時代、高知の農家さんの手伝いなんかにも行っていまして、農業を自営業でやっている農家さんは、自由にやっていてすごく楽しそうでした。でも、せっかく農業の世界で生きていくなら、最初から自分でできる範囲で独立するより、もっと大きな世界を「先に」知った方が良い気がして。生産から消費の現場までを経験したいと思い、農業の企業参入を計画していたワタミに就職しました。そこで居酒屋店舗での店長を経験したのち、有機農業事業の立ち上げに取り組みました。
ーワタミでの仕事はいかがでしたか?
ワタミファーム自体が、僕が入って3年後に出来たのですが、企業が農業参入していく現場を経験したことで、現場で何が生まれて誰が幸せになるのかというのをリアルに感じることができました。完全素人の社員が集まり、ネットで情報を集めたり、近所の農家さんに聞きまくったりしながら生産するわけです。オーガニックだったので10ヘクタール、東京ドーム二つ分ほどの広さの農場、手作業も多く終わらないんです。
ーすべて手でやるとなると大変ですね…。
ひどい時はかなり体を酷使することも。
夜に野菜の袋詰めをしていると日が昇ってきて、収穫して野菜を洗って詰めて、夜にまた袋詰めしていると日が昇ってくる。収穫の時間だ!と。
どこかで何かがおかしいけど、末端価格から逆算すると、生産現場でこの時間数でやらないと採算があわない。農業もDXなどと言われていますが、正直まだその前にやるべきことが多く、結局一番大事な判断に関しては、植物の状態がいいか悪いかさえ数値化できていない。DXで解決できることも少なくはないので、現場のマネジメントとDXを併用しながら具現化していくことを考える必要があると思います。
サラリーマン農業から独立へ
ー独立のきっかけを教えてください。
もともと独立志向はありました。その中で、ワタミの農場やトマトの農場の立ち上げを責任者として行わせてもらい、予算組みや地域でのあり方、人の採用というような個人事業主と同じことを会社の中で経験させていただきました。それぞれの事業をきちんと黒字化させることができたこと、子供が生まれて、リスクを取って事業の立ち上げをできるのは今しかない、と思ったことがきっかけです。
ートマトといちごを育てた理由はありますか?
会社員として露地栽培と施設栽培を経験させていただいたことが大きいです。施設栽培は台風などのリスクに対してある程度コントロールできます。また、栽培のなかで、灌水量だったり、肥料、病害虫の管理など、人がコミットできる領域が広いことが自分には向いていました。うまく行ってもいかなくても、自分のせい。ということです。
その中でトマト、いちごを選んだのは、お客様が選ぶ際に味の重要性が高いからです。おいしい、おいしくないがはっきりしていて、それだけにこちらも腕の振るいがあるといいますか。
ー淡路島を選んだ理由は?
移住して農業を始めるにあたり、要件を決めました。①トマトを栽培しやすい地域であること、②消費地が近いこと、③海が近く魚がおいしいこと、④両方の実家に近いこと(両親に子育てを助けてもらえそう)。
そうすると、「瀬戸内海沿岸の京阪神に近いところ」ということになりました。全国的に空きハウスが増えていたこともあり、この辺りでハウスが見つかるだろうと探し始めました。元々は本州側で探していたのですが、そもそも兵庫、大阪、和歌山の海岸沿いは工業地帯なので農業用ハウスが立っていないんです。苦戦しながら、大阪湾から対岸を見ていたところ、淡路島に気づきました。本当に知り合いが一人もいないような状態から飛び込んだ感じです。
そう決めてからは、とにかく情報収集。1週間居座り、転々としながら、トマトの農場を立ち上げたい!と行政や農協さんなどに相談に行きました。最初にハウスを借りた大家さんとももう14年くらい、いい関係が築けているのでありがたいです。
意識していること
ー事業をするうえで意識していることはありますか?
まずはおいしいものをきちんと作る技術を積み上げること。その先に、それをどうお客さんが喜んでくれる価値に高めていけるかを面白がってやることです。
「自分たち」が「自分たち」として必要とされたいので、栽培から商品開発、広報まで自分たちでやります。働く方が楽しめる大きなテーマに向かうことが大事。例えば、プロの料理人になる、とか、プロの栽培家になる、という「物」になるのではなく、お客さんを喜ばせられるスペシャリティを「何をもって」持つべきか。レストランはトマト農家×淡路島食材なので、トマト料理に関してはだれにも負けないくらい強いトマト愛があると、よりスペシャルな料理が作れないか?そんな料理を目指していると、畑にもコミットしたくないか?そんな風に。目指すべき人は、畑とお店を武器としてお客さんを喜ばせるスペシャリスト。それぞれがそんな風に感じながら、栽培、接客、商品開発などなど、ポジションを変えながら関わっていけるような集団になると、世界の中でも相当レアなチームになれます。それぞれのテーマが深いからこそ、目指すべきものがはるかかなたにあるので、モチベーション高くいいチームが作れると思っています。
あとは事業だけに限らず、自分が選んだ道だと思って生活することです。
うちの会社は僕も含め淡路島には無関係で、農業もしたことない人たちでやっています。なので、好き好んで農業をしに淡路島に来る人じゃないとやっていけません。
辛くても、自分で選んだことだと常に思っています。
畑も持っているだけでお金がかかるし、常に管理しないと周りに迷惑がかかります。そういう管理やルールも、自分で選んでいるという意識を持つことで責任を持てるんです。
地域や人のせいにしていると楽なんですよね。
でも、楽をして生きるために生まれたんじゃないという大前提としているし、そういう考えを持っている人と仕事をしたいです。
お客さんを自分達にしかできない方法でどのように喜ばせられるかというのを大事にしています。
いちごが浮いている!?空飛ぶいちごハウス
ー空飛ぶいちごハウスにしたきっかけを教えてください!
ハウス施工のスペシャリストである友人と、海外の展示会でハンギングのいちごハウスを見つけたことがきっかけです。これすごくない?これやってみたい!と、盛り上がり進めました。スペインから輸入したわけですが、直接現地のハウスメーカーと売買契約を結んだり、日本では見かけないハウスの構造を理解しながら建築したり、現場はめちゃくちゃな感じでしたが、振り返ると楽しかったです。
メディアでは「空飛ぶいちご」として、ビジュアルが強く認識されていますが、僕たちは「いちごに包まれる、そのいちごが大きくて美味しいこと」にエネルギーを注いでいます。これはプロのいちご農家さんがやってもなかなかできないことで、僕らは栽培オタクとして本来は認知されたかったんです。
ーこの時期(6月)でも美味しくいちごを食べるためにしていることは?
おいしいいちごはおいしいいちごの樹になります。そういう樹を定植する9月から、ずっと翌年の6月を意識して栽培することです。いちごは休眠という性質があり、冬の低温期で休眠する前に急激に甘くなります。「もう冬になるから実をつけようかな~」と「冬だから寝る!」のきわきわの状態が一番甘いんです。そこから寝る(休眠してしまう)と、花も葉っぱも出なくなってしまってしまいます。全く収穫が出来なくなる。さらに、一度休眠すると、温度が上がり始めた時に春が来たと感じるので、一気に体を作る方向に向かい、美味しくないいちごをたくさんつけてしまいます。6月にいちごが売っていないのは、6月の為に10月からそこを意識して栽培する、そんなめんどくさいことに労力を割く農家さんが少ないからです。ハウスの外の温度や日射がどんどん変わっていくのに、「うとうと眠いなー」と3割寝ているくらいを保ち続けるために、昼、夜の温度や肥料濃度、光、CO2を調整し続けて、ナロウパスを通し続ける。めんどくせー!!
ーそういったことも知った上でいちご狩りをすると、より濃密な時間が過ごせそうですね。
いちごピクニックはいちごがぶら下がっていることが特殊だと言われますが、その「空間を体験できること」自体が価値だと思っています。いちごハウスの中は冬でもぽかぽかで、昼間は暖房を入れなくても本気で締め切ってしまうと70度くらいまで上がるんです。それだけ太陽の光は偉大です。ハウス内は昼間、大体22,23度を保っていますが、ハウスの中と外は別世界です。この空間でいちごの世話をしていると、ここにいるだけで価値があると感じます。それを感じてほしい!と思ったのが、そもそもですね!ピクニックで使う椅子もキャンプチェアのような座面が低いものを使っていて、低いからこそ見上げると星空みたいないちごたち(笑)。いろんなグッズにいちごの空間を楽しんでもらうためのこだわりが詰まっています。いちごピクニックは、いちごが美味しいことと、いちごを美味しく作ろうとしている人がめんどくさくこだわって作っていること、ピクニックの運営自体をスタッフ楽しんでいることが伝われば嬉しいです。
築110年の醤油蔵カフェ!グレイナリー
グリナリウムグレイナリーの外観
ーグリナリウムグレイナリーを作ったきっかけは?
いちごの生産量が増えたので、もっとアクセスの良いところに直売店を持ちたいと考えました。いちごを完熟の一番良い状態で収穫するなら、直売するしかない。完熟したいちごはすぐ食べないといけないので。今まではトマトがメインだったので、スーパーなどに販売していたので、BtoBが核でした。いちごは鮮度商材で、品質で差別化しやすいのでこの「いちご愛」を直接届けたい!と思ったのもグレイナリーを作った理由です。
ー醤油蔵を改装されたそうですね!
そうです。醤油製造を辞めて蔵を貸してくれるおじいちゃんがいる、という話をいただき、いちごを持って挨拶に行きました。後日おじいちゃんから電話がきて、「トマト頑張っているらしいな。あんたが持ってきたいちご美味しかったからやってみるか?」と言ってくれて借りることになりました。そういう人の思いや、おじいちゃんが長年大事にしていた蔵だからこそ、あの築140年の蔵が一番格好良く見えるよう内装をリノベーションしました。柱にはほぼ新しく釘を打っていないんですよ。照明にも柱が主役になるようこだわっているのでぜひ見てみてください。
グレイナリーの内観
ーメニューもみなさんで考えられているのですか?
そうです。『いちご愛がとまらない』というコンセプトがありますが、本当にいちご愛がとまらない店を作っている最中です。神戸のチョコ屋さんとコラボしたチョコパフェや淡路の老舗和菓子屋さんとの和パフェなど、いちごのプロ×○○のプロだからこそ生み出せる商品があります。看板メニューの白雪パフェは、蔵の薄暗い内装の中で、キラキラ輝くようなパフェです。
白雪パフェ2,280円
いちごの季節は半年なので、冷凍や加熱したいちご商品の開発も行っています。試作をしているときには、考えて考えて、これで行けるか?と試行錯誤するのですが、いざお客さんの観点に立ってみると「なんじゃこれ」ってなることも多く…(笑)すごく難しい。せっかくいちご農家だし、完熟させることでそれぞれの品種の違いをすごく出すことができるので、いちごの品種によって合わせるクリームを変えてみたり。いちご愛がとまらないからこそ、栽培と商品開発、内装、サービスまでとことんこだわりたい。このこだわりが商品開発をさらに難しくさせますが、その難しさを楽しんでいます。
ローカルで生活するということ
ーローカルの良いところを教えてください。
人の距離感が近く、事業とプライベートの境界があいまいなところです。よくも悪くも(笑)。
事業を通してどんどんお世話になる人が増えて、家族ぐるみの付き合いになることも多いです。おせっかいな自分の性格には、すごく向いているんだと思います。
事業という事では、移住者には移住者の強みがすごくあるし、逆に弱みもあります。例えば、観光事業ではお客さんは都会の人なので、地元の人よりその地域が持つ、都会の人が感じる良さを見つけやすい。あれも、これも素敵だから、こんな見せ方できないかな?なんていう事も多いです。また、今まで外で築いてきたネットワークも生かし方が結構あったりして。そういうものを発揮して「自分と地域が一緒に発展するビジョン」を持てると、一気に協力してくれる人も増え、小さなビジネスでもローカルにインパクトを与えられるような事業を作っていける面白さはすごくあります。
弱みの部分では、都会では経験できないローカルな人との距離感。知らない世界なので仕方がないのですが、知らない自覚がないことが問題です。道行く人に挨拶をするのか問題、というのがありまして、ローカルなコミュニティではかなり知り合い率が高いので、移住者の人たちには、とにかく「こちらは知らなくても、相手からは知られている感」を自覚して挨拶しまくることをお勧めしています。この感じが理解できると、ローカルの距離感の居心地の良さにどっぷりはまれるかと。逆にここを理解できないことで、変に干渉を受けている感覚が強くて楽しめない人も多い気がします。
そういうのも含めてローカルで働くことは良いと思うし、ローカルで働くのが向いている人は都会に結構いると思います。ただ、なんか疲れたから田舎に行くという考えだとひどい目に遭うので気を付けてください(笑)
それと、これは余談的ですが結構大事な気づきの話として、生活の中で「渋滞で待つ時間」がない。通勤時間が短い。朝家を出て、10分後には仕事を始めているような。仕事が終わって10分後に家でビールを飲んでいる。あまり意識する人はいませんが、一生だと相当な時間数になると思います。
移住や新規就農の相談を受けることも多いですが、最近思うことは、ローカルも都会も、人材不足ではありますが、誰でもいいわけじゃない。今までの人生で磨いた武器を使う場所がローカルなだけ。という感覚はすごく大事だと思います。僕の場合は、トマトの作り方や事業のやり方を全部経験したうえで、ローカルで事業を立ち上げました。武器を持っていないと、「武器を作る」、「田舎で生活する」という二つのことが同時に求められるので、落ち着くまでは大変です。都会にいるなら、そこでしっかりと爪を研ぐことも大事だと伝えたいです。
テラス席
おわりに
ー大森さんにとってグリナリウムとは?
グリナリウムは、「!オドロキを実らせる」農業生産の現場とお客さんとの接点です。植物とお客さんの間に僕たちがいて、植物の良さを最大限に引き出して、空間や体験を通してお客さんに届けるという場所です。グリナリウムがお客さんにとって特別な場所であり続けられるよう事業を続けていく覚悟ですが、最近はお客さんとしてファンになってくれた人が入社したり。こういう接点が、ローカルや農業という、普段都会では意識しないものを身近に感じてもらったり、働く場所、生きる場所を選ぶ選択肢を増やすことになると面白いと思います。
ー最後にメイドインローカルを見ている人にメッセージをお願いします!
グリナリウムは、淡路島の外から来た人たちが作っている場所です。だからこそ、自分たちが淡路島に来てこういう場所で過ごしたいというものを表現しています。もっといちごやトマトを知りたい、おいしく作りたい、おいしく食べてほしいという強い思いが、グリナリウムを前に前に進めます。今後のグリナリウムにも期待してくださいね!
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