これからあるべき日本の観光の形とは?『今だけ、ここだけ、あなただけ』ー跡見学園女子大学 篠原靖准教授ー
柚葉

こんにちは、ライターの柚葉です:)

2年ぶりに行動制限がなかった今年のゴールデンウィーク。

皆さんはどこかへいきましたか?

2020年からこの2年間、我慢してきたことが沢山あると思います。

そのうちの一つが「観光」ではないでしょうか。

観光と聞いて皆さんの頭に浮かぶものは、国内旅行、海外旅行、娯楽などだと思います。

しかし、観光はこれからの日本を支える大きな産業として成長していくべきものです。

今回はそんな観光の在り方、これからの観光、これからの日本について篠原靖准教授に取材させていただきました。

篠原 靖 (しのはら やすし)

跡見学園女子大学 観光コミュニティ学部准教授。
●内閣官房 地域活性化伝道師●内閣府クールジャパン地域プロデュサー 
●総務省地域力創造アドバイザー
・地域に眠る観光素材を掘り起こし、具体的な旅行商品化を図る面白企画の達人。大胆かつ斬新な発想での商品開発力はテレビ・新聞等マスコミでも有名。
・現在、全国各地で新しい観光プログラムの開発や人材育成セミナーを担当している。観光庁: 『地域独自の観光資源を活用した地域の稼げる看板商品の創出事業』有識者委員等★各省庁の委員や全国各地の観光関連委員等を多数歴任
●専門研究分野は「アフターコロナの観光戦略」、「観光による地域活性化論」、「交流人口拡大論」

篠原さんの活動について


現在は色々な国の観光、あるいは地域振興に関する委員をかなり多く承っております。

企業も学者も今の時代、しっかりと自分の強みを明確にしていく必要があると考えています。

大学の教授という職に就く前は、30年間旅行会社で多岐に渡る業務を行っていました。

そのため、私の強みは何よりも現場を知っているということです。

全国に観光の教員はたくさんいますが、観光の難しさは机上の理論を観光の現場でどのようにして回して行けるかが重要です。

すなわち観光は頭で理解している理論を現場で具体的に展開できるかが勝負になります。

地方は少子高齢化の進行で弱体化してしまった地域力や複雑な人間関係のしがらみなど、思い通りいかない理由が沢山あります。

こうした、環境の中で篠原流の新たな観光による地域振興の手法を全国で展開しています。

地方創生、観光のあり方


→(写真1:秋田県大館市インバウンド農家民泊事業視察)

地域を盛り上げる。

地域を活性化させる。

このような目標を掲げている地方の地域は数え切れないほどあります。

しかしそれらの努力や意思がうまく実現しないのはなぜなのでしょうか?

まずは一番に私が重要であると考えることは、地域の方々が自分の地元に誇りを持つことです。

自分が住まうまちが自慢できなければ、観光客も魅力を感じてくれません。

自分が生まれ育った地域の生活文化を磨き上げ、観光としての付加価値を付ける事、すなわち「住んでよし、訪れてよしのまちづくり」を目指すことが早道です。

まず、地域の皆さんに自分の住まうまちを好きになってもらうことです。

観光客を呼ぼうとしても地域の人々たちが自身のまちを好きでないと観光客は定着して、リピーターとしてまた来たいと思うようなまちにはなりません。

今や観光は政府の成長戦略の柱として位置付けられています。

今こそ観光の新たな価値創造が求められています。

従来は観光と言えば宿泊施設、公共交通機関、飲食店、みやげ店など観光客と接点を持つ業種の方々がビジネスを展開していましたが、これからの観光は農業、漁業、製造業など、今までは観光と縁もゆかりも無かった人々をまきこみその土地の魅力を発見し、観光素材として磨きあげる戦略が必要になります。

言い換えればこれからの地域観光は地域の総力戦と言っても良いと思います。

すなわち「いつでも、どこでも、どなたでも」いわば利便性重視であった従来の観光のスタイルを変化させ、その土地でしか味わえない「今だけ、ここだけ、あなただけ」の新しい観光スタイルを提案できるかがポイントで、成熟した観光のお客様に新たな体験を提供できる事が大切になります。

「秋田犬」のふるさと秋田県大館市


(写真2:観光庁認定地域連携DMO「(一社)秋田犬ツーリズム」の皆さんと)

こ:地域連携DMO「(一社)秋田犬ツーリズム」

【設立の背景】

現在私が携わらせていただいている地域創生の取り組みを一つ紹介したいと思います。

北東北の観光の分岐点でもある秋田県の大館市です。

大館市は高齢化・人口減少が著しい地域の一つであり、新たな地域活性化対策の構築に迫られていました。

そこで同市の福原淳嗣市長は「稼ぐ観光」を掲げ近隣市町村と一緒に新たな観光による交流人口の創出を行っています。

大館市は従来、有名な観光地ではありませんでしたが、観光庁の認定の地域DMO「( 一社)秋田犬ツーリズム」を中心にこの数年間で観光による交流人口創出に向け大きな進化を遂げています。

世界的知名度のある「秋田犬」をフックに、秋田犬をベースとしたミュージアムを作り地域の価値向上による稼ぐ観光を目指しています。

コロナ禍、コロナ後の観光


3年ぶりに行動規制のないGWで、ニュースを見ていても大渋滞の放送がされています。

難しいのはコロナが変異をしていること。

感染力は高いが、重症化率は低いことが経済を優先することを可能としています。

急場凌ぎの給付金で凌いで行くなはもう無理だと皆さん気づいていますよね?

根本的に大切なことは、感染症がこれからも起こり得るということを理解しておくこと。

安全であることを示し、他の地域とは異なった独自の感染対策を行うなど、地域の魅力だけではなく、感染症対策をも差別化を図っていかなければなりません。

日本は現在、人口減少の中、海外からのお客さんを呼びながら外貨を獲得しようと観光に力を入れています。

これから全世界の人々が今まで我慢してきた観光が爆発的に起こり、リベンジ消費が待っていると考えられます。

みんなが旅行したいと言う欲を発散しに色々な国に旅行へ行く。

そのときに選んでもらえることが大事です。

現在は3本の指には入ってきている日本ですが、国としてだけではなく、県、地域として取り組むこと。

具体的な医療関係との連携を「見える化」させる。

日本が安全であることをアピールすることが非常に重要となってきます。

未来の日本


日本が今後世界に打ち勝って、国力を維持するために世界で勝っていける産業の大きな柱の一つに観光というものがあります。

今はコロナで大変な環境ではありますが、日本の各市町村までが徹底して「日本モデル」のようなある程度しっかりとしたグレードを保って、国全体で安全な国を作り上げることが大切です。

それを「見える化」させてPRしていくことです。

そして現代は日本人と同様に外国人も日本の生活文化に興味を持ってもらえる時代です。

日本の観光の問題は、外国人観光客は大阪や東京に集中してしまい、外国人が動くルートとされているゴールデンルートができてしまっていることです。

大切なことは、外国人にきていただいた時に地方分散することです。

「そこにしかないもの」をいかにして顧客価値を作れるかが大切になってきます。

これを全国が行うことによって外国人が今まで来るはずがないと思われていた地域に訪れるような環境が可能になっていくと思います。

国がやはりやるべきこと、そして、県がやるべきこと、市町村がやるべきこと、民間がやるべきことの役割を整理していく。

観光立国に沿うような形に日本の観光が発展していければ、地方創生に大きなインパクトがあるだろうと私は思っています。

読者の皆様に


地方創生は地域の総力戦です。

今まで自分は地方創生に役割は担えないと、関係がないと思っていた、そういう人たちも観光で言えば、おもてなしをする。

今までのような観光産業である、ホテルや交通機関、飲食業の人たちだけでは観光は考えられない時代です。

また地域の総力戦として色々な方が参画しながら、地域の良さを伝えられる仕組みを作っていくことが大事です。

そのためには、若い人たち、そして高齢の皆様、観光とは関係なかった人たちが一つになって頑張っていくようにすれば、明るい未来はあると思います。

本当に頑張ろうと思う地域があれば私も本気で応援します。

研究者名

篠原 靖 准教授

所属

跡見学園女子大学 観光コミュニティ学部

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