「子育ての村であること」を大切にし続けられる環境づくりを ―70seeds株式会社 代表取締役・編集長 岡山史興―
昇 未来

活動を始めたきっかけ

―――活動を始めたきっかけはなんですか?
岡山史興さん(以下岡山さん):もともと長崎出身で、地元に何か貢献したいという想いがありました。その想いから、高校生の時に長崎で平和活動を立ち上げ、活動をしていました。しかし、原爆というテーマはみんなが共有できるものにまだまだなれていないように感じて・・・。そんな中、東日本大震災で被災した方々の事業の復興や立ち直していくためのお手伝いをしていた時に、“被爆者にとっての原爆や戦争というテーマ”“スモールビジネスの方々にとっての目の前の自分の事業をどうやって成り立たせていくのか、自分らしく生きていくためにどうがんばっていくのか”ということは同じなんだなと気づきました。一人一人が平和な状態を作るにはその人が今いる場所で最大限幸せになるための後押しをしていくことが大切なのではないか、その後押しが自分にできるのではないかと思ったことがきっかけです。

―――どんな想いで活動をされていますか?
岡山さん:地域で頑張っている方々や、地域に根ざして自分のやりたいことやそれを実現しようとしている人たちを応援したいという想いを強く持っています。地域を盛り上げる、というよりもそこに住む人が楽しく生きられている結果、地域“も”盛り上がるという順序が大切だと思います。

―――活動をする上で意識していることはありますか?
岡山さん:よく移住者はよそ者扱いされるということがありますが、よそ者扱いされることに自覚的であることは大事だなと思っています。私は移住にあたっては、東京から地元である長崎に帰ることも含めて検討した結果、今この舟橋村に住んでいます。どこかに移住しようとして移住するという感覚で住む場所を選ぶ人ってまだまだ少数派ではあるんですよ。基本的には自分の住む場所に対して、ここで生まれたからここで暮らす、ここで仕事をしているからここで暮らすという人たちが大半です。その地域にずっと住んでいる人たちが持っている土地への愛着であったり、その背景にある相手型の思い。そういったことを想像したり、尊重しながら、お互いの良い関わりの仕方でしっかり価値を生み出していくことは、地域で活動をする上で意識しているところです。

―――やりがいに感じることはなんですか?
岡山さん:やりがいをあんまり目の前で感じることはあまりないですね。おそらくやりがいというものを意識していなくて、やりがいを求めてやっているというよりかは、こういうことやっといた方が今後絶対この場所で育つ子どもにとって良いよなとか、こういうことをやっといた方が周りの人がもっと自分らしく生きていける場所を作ることができるよなとか。そういう感覚なので、目の前での答え合わせというものはできなくて、10年、15年後に子供が育っていったり周りの人がいろんなことに挑戦していけるような環境が出来上がってきたときに、やっていて間違いじゃなかったなと思えるのかなと思っています。

農業を通じて地域を元気に

―――日本一小さな村、舟橋村を知ったきっかけはなんですか?
岡山さん:70seedsのwebメディアで地域に関わることを取材していた時に、日本一小さい村なのに人口が増えている村があるというのを知り合いから聞いて取材をしに行きました。それが最初に舟橋村を知ったきっかけです。

―――なぜ舟橋村に移住しようと決めたのですか?
岡山さん:よくある「補助金で移住者を誘致」というやり方ではなく、住んでる人同士が支え合う仕組みを作って、子育てのために移住してきた方たちが協力しあいながら、子育てしあえるような環境を作ろうという政策が実行され、実績が生まれていることに魅力を感じたからです。

―――現在どのような活動をしていますか?
岡山さん:もともと取り組んでいた、「できる.aguri」という農家さんのI T化を支援するプロジェクトと連携して、2019年に村の農業ブランド化プロジェクトをスタート、翌年にはプロジェクトメンバーによる団体として舟橋村農業ブランディング機構FABOを立ち上げました。



―――様々な農業に関する活動をされていますが、始められたきっかけはなんですか?
岡山さん:70seedsというWEBメディアで全国あちこち回っている中で、農業はどこの地域でもすごくキーになっていて、いろんな産業に影響を与えると感じました。その農業の課題を解決することは日本全体の地域の課題を解決することにつながるのではないかと思ったことがきっかけです。

―――できる.aguriではどのようなことをされていましたか?
岡山さん:コロナ禍前までは、プロジェクトに参加している企業様と一緒に農業のIT化を推進していくための講座を、全国各地を回って農家さんたちに行っていました。また、各地のいろんな事例を記事にして発信していました。生産から販売、経営といったところをITの力でできることを増やしていく活動をしていました。現在は不定期でオンラインでワークショップをする程度で、活動としては落ち着いています。
5年前の立ち上げ当時に比べるとインターネット上での農家さんのコミュニティーはすごく広がっていて、できる.aguriが元々考えていた目的は達成できているのではないかと思います。

―――農業ブランド化プロジェクトではどのようなことをされていましたか?
岡山さん:舟橋村に移住して1年目の2018年に村の役場の人から、農業を元気にしていくような取り組みを行いたいという相談を受けました。2019年から村の農家さんや有志を集めて、舟橋村で農業を魅力的にするためにはどうしたらいいのかという議論を始めました。約1年、ブランディングとは何か?ということを考えてもらったり、僕自身が村の農業について教えてもらう機会をもらったりしながら議論し、2020年から実際に商品を作ったりイベントを行っています。

―――FABOではどのようなことをされていますか?
岡山さん: FABOは2020年に農業ブランド化プロジェクトの中で生まれてきた団体です。村の若手生産者と協力してやっていきたいという4人のメンバーで活動を行なっています。子育て世帯と農業の距離を近づけることで、村で獲れたお米を村の中の人たちに食べてもらおう、村の中で農業に触れる機会を増やして、村の農業を残していきたいと思ってもらえるような取り組みをしています。今年も春夏秋冬で村の人たちに農業に触れてもらうイベントや、村の人に村で作ったお米を直接買ってもらえるような企画をしています。

―――どのようにブランディングや企画を考えていますか?
岡山さん:ブランディングや企画を考えるとき、ないものはないと割り切ること、張りぼてにしないことが大事だと思っています。誰に向けたものにするのか、村がやる理由、その背景やストーリーを誠実に作り込むように考えています。

―――苦労したことはありますか?
岡山さん:農業の高齢化が進んでいて、なかなか農家さんが自分たちだけで盛り上げていくことが難しい面もあります。舟橋村は米を作る人が大半なのですが、どうすればお客さんにより高く価値を感じてもらえるかを考えていかなければならないと考えています。
今、ふるさと納税で村で作った米を使って子育て世帯の方々と開発したクッキーを販売しているんですけど、農業を入り口に村のことが世の中に広まって、結果、産業が盛り上がることにつながればいいなと思います。
また、最近では地方移住いじりをする方も増えていますが、子どもを育てやすい場所、子どもを自然に触れさせたいと思ったとき、候補になるような場所にできるといいなと思います。

―――新しく舟橋村の特産は作られているのですか?
岡山さん:農業では新しいものを作っていこうというよりは、今あるものをもっと村の中で愛着を持ってもらうことに力入れていきたいと思っています。
例えば、日本一小さい村なので、お米を個別宅配したり、予約注文を取るなどして、自分たちの土地で作ったものを自分たちの土地の人に食べてもらえるようにしていきたいと思っています。


今後の活動について

―――活動を行う上で今後の課題はありますか?
岡山さん:暮らしや村の雰囲気が政治の体制でパッと変わってしまうことです。移住するきっかけになった前の村長さんの方針は、上でも述べたように補助金を出すのではなく、住んでる人たち同士が支え合う仕組みを武器にして、子育てのために移住してきた方たちが協力しあいながら、子育てしあえるような環境を作ろうというものでした。その結果、この30年で人口が倍増してきたのですが、去年の1月に村長が変わって、そこから子育てのための姿勢が大きく変わってしまいました。

―――どのように変わってしまったのですか?
岡山さん:例えば、今年の4月からこれまで村が直営でやっていた学童保育の事業が民営化されました。民営化のプロセスが不透明だったり、不便になることに対して、いろんな住民からの不満が出ていて、「子育て世帯に寄り添っていないのではないか」と議会に質問状と、300人以上の署名が提出されるほどでした。

―――300名もの方の署名が集まったのですね
岡山さん:そこでしっかり住民が不満をあげたり、署名を集めて提出するといった動きは行政に任せきりではなく、行政に対する自治作用がきちんと働くことが、助け合いを作ってきた住民だからこそで、すごくこの村らしい良いところだなと思います。

―――大切だと思うことはなんですか?
岡山さん:このような動きは自分だけ頑張っていればいいわけではなくて、地域全体の空気感や行政の方針とか、いろんなものに左右されながら動いていくものなので、その中でどれだけいろんな関係者と手を取りながらやっていけるか、その村にとって本当に必要なことを自分はできているのかといったことが本当に大切なところだと改めて感じています。

―――今後も農業が活動の中心になりますか?
岡山さん:これまでは農業を入り口に村のことを知ってもらったり、村全体のブランド価値向上につなげるということを目的の一つに設定していたんですが、今さらに力を入れているのが、村のお母さんたちの取り組みの後押しです。富山県全体として共働き家庭が多いんですが、その一方で女性の管理職の割合が少なかったり、自分の働きたい仕事ややりたいことができている割合が少ないというデータがありました。その中で舟橋村のお母さんたちが、例えばハンドメイドで一本収入が成り立つぐらいにしていけるといいよねという話からチームを組んで子育て世帯向けの商品開発をしたり、アップサイクルのプロジェクトに取り組んだりしています。子育てや子どもが幸せになるために親も幸せになれる方がいいよねということや、子育ての村であるということを大切にし続けられる環境づくりをミッションに据えて取り組んでいます。



―――今後やっていきたい取り組みはありますか?
岡山さん:学童保育の施設を作りたいと思っています。ただ子供を預かるというよりは、「やっぱりこの村は子育ての村だよね」と改めて思えるきっかけになるような場所にしていきたいし、自分の取り組みが、いろんな人の子育ての後押しになれば良いなと思っています。
子どものためになることで、子育てをしている大人たちの役に立っていくことが必要だなと思っています。行政に頼るだけであったり、子育てに取り組んでいる人だけが頑張るということではなく、地域全体で子育てを応援していけるような、外部環境が変わってもちゃんと持続できるような子育て環境を作っていきたいと思っています。

―――地方創生を目指す若者にメッセージをお願いします!
岡山さん:地域のために役立とうと考えるのではなく、まずはそこで自分がどれだけ楽しめるのかを考え、どんどんアクションを起こしていくと良いのではないかと思います。若い人たちが楽しめる場所にしていければ、それに惹かれて自然と人が集まるし、そのようなまちはきっと魅力的なまちになると思います。

―――読者へ一言お願いします!
岡山さん:何かやりたいことがある人は是非どんどんアクションを起こしてほしいと思います。そして、その挑戦に対して寛容な空気を作るのが周囲にできることです。やる人と見守る人の両方が増えることでより良い地域が生まれていくのではないかと思います。


子育てのため、地域のために様々な活動を行なわれている岡山さんにとても感銘を受けました。
皆さんも一緒に地域を盛り上げていきましょう!!

企業名

70seeds株式会社(70seeds ,inc.)

所在地

〒135-0034 東京都江東区永代2-20-8 河田ビル1階

創業年

2017年5月24日

代表者

代表取締役・編集長 岡山史興

事業内容

事業開発、PR支援、プロジェクト運営、コンテンツ制作

WEBサイト

https://70seeds.co.jp

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