【大津市 vol.1】地域の人が主役になるまちづくりへ。「いかだちマルシェ」と大津市・伊香立学区の地域力


皆さんは、地域のマルシェが単なる「イベント」ではなく、住民や団体、事業者、行政をつなぐ、まちづくりの場になっている事例をご存じでしょうか?

滋賀県大津市の伊香立学区では、地域のさまざまな団体などが連携してまちづくりに取り組む伊香立まちづくり協議会を中心に、「1 伊香立学区の人と人が交流する場を作る」「2 伊香立学区の人の特技や趣味を披露する場を作る」「3 伊香立学区の魅力を知ってもらう場にする」をコンセプトに、地域の人のふれあいの「場」として「いかだちマルシェ」が育てられてきました。

今回「Made In Local」では、大津市市民活動推進室と伊香立まちづくり協議会への取材を実施。第1回は「いかだちマルシェ」の立役者、伊香立まちづくり協議会の杉江 望未さまにお話を伺いました。

大津市が目指す、市民・団体・事業者・行政が力を持ち寄る「協働」の視点から、「いかだちマルシェ」と伊香立の地域づくりをご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください!

杉江 望未さまプロフィール
https://shiga-love.com/administrator/

地域の交流から生まれた「いかだちマルシェ」

まずは、大津市の伊香立学区がどのような町かを教えてください


伊香立は、比良と比叡の山並みが連なる麓に位置する、自然と歴史に恵まれた地域です。

何か新しいことに挑戦しようと呼びかけると、幅広い世代の方が集まり、積極的に行動してくださる、あたたかな地域だと感じています。

新しく住宅地が建設されたことで、直近の10年間でおよそ300世帯が移住し、子育て世代も増加してきているのが、この地域の大きな特徴です。2022年度には、伊香立小学校の新1年生が23年ぶりに2クラスとなりました。

伊香立公式サイトでは「結ぼう伊香立 つなごう未来へ」を掲げ、地域の出来事や人、暮らしを発信しています。
https://ikadachi.jp/
(写真撮影:いなフォトプラス https://inaphoto.shiga.jp)

「いかだちマルシェ」のこれまでの歩みについて教えてください。


「いかだちマルシェ」は、コロナ禍で夏祭りなどの行事が相次いで中止となる中、2022年に始まりました。2025年までに4回開催され、2026年で5回目を迎えます。

2022年に「大津市地域元気づくり事業補助金」を活用し、伊香立まちづくり協議会で何かできないかと考えた際に、地域の方から「マルシェをしたい」という希望が出たのが開催のきっかけでした。

第1回は49店舗が出店し、来場者数は2,500人と盛況となりました。翌2023年の第2回は出店数99店舗、来場者数5,500人となり、2024年の第3回には来場者数が10,000人に達するなど、地域の一大イベントとして多くの方に親しまれています。

さらに、過去には大津市が国民スポーツ大会「わたSHIGA輝く国スポ・障スポ」のPRブースを、今年は「文学のまち大津」にまつわるPRブースを出されます。

このように、行政の取り組みをPRする場としても活用いただくことで、今後も伊香立と大津市とが相互に良い影響を与えられるイベントになればと思っております。

4年間でここまで来場者数を増やすことができた秘訣について教えてください。


来場者数を増やすことができた理由は大きく分けて3つあります。

(1) 素敵な出店者さんに恵まれたこと


まず1つ目は、この企画に込めた想いに賛同してくださっている素晴らしい出店者さんばかりであるという点です。

元よりこのマルシェは、伊香立関係者(在住・出身)の趣味や特技を発表する場として作ったため、雑貨やサービスの販売は基本的に伊香立関係者のみ出店OKとしています。

飲食販売に関しては、伊香立だけでは賄いきれない部分もあるため、マルシェのコンセプトを理解してくださり、一緒になって素晴らしいマルシェを作ってくださる、信頼できる事業者の方に限定しています。

特に、伊香立近隣の事業者さんにお願いすることで、地域住民と近隣店舗の方とで交流が生まれ、マルシェ以降も素敵な繋がりができると考えているため、湖西の出店者さんがほとんどです。

マルシェを通じて、伊香立を中心とした広い意味での「まちづくり」が実現できれば良いなと思っております。

(2) 宣伝費をかけず持続可能なイベントに〜口コミで広がった伊香立の魅力〜


町のイベントということで、基本的にチラシ印刷以外でお金のかかる広報はしていません。

利益を出すイベントではありませんが、できる限り自走できるようなイベントに近づけていきたいと考えています。

第1回目から、地域の方々が自分の職場でチラシを配ってくれたり、友達に渡してくれたりと、積極的に協力してくれていました。

そういった協力のおかげで、「いかだちマルシェ」は口コミで広がっていったと感じています。

また、出店者さん向けにインスタ用の画像を提供し、出店者さん自身にもイベントについて告知していただきました。

素晴らしい出店者さんが素晴らしいお客さんを連れてきてくれるので「いかだちマルシェ」は温かく、他のマルシェとは違った魅力があるのだと考えています。

あるスタッフは、竜王の有名なマルシェに遊びに行った時「いかだちマルシェすごいらしいね!」と言われたそうです。

琵琶湖の反対側の大きなマルシェ会場でも「いかだちマルシェ」の話題が出るのはとても嬉しいですね。

このように、口コミによって知名度が高まったことが来場者数が増えた2つ目の理由だと考えます。

(3) 伊香立学区の方々の協力


「いかだちマルシェ」がここまで来場者を伸ばすことができ、多くの人に愛されているのは、紛れもなく地域の方々の協力のおかげです。

仕事がお休みの日に事務所に来て、私たちが相談する前から「今年こうするのはどう?」と提案してくださる方、前日準備・当日準備など朝早くから夜遅くまで協力してくださる方、ボランティアで大型のトラックを出して機材の運搬をしてくださる方、お願い事をしても嫌な顔ひとつせず快く引き受けてくださる方など、地域の方の協力があったからこそ素敵なマルシェを開催することができ、続けてこられたのだと思います。

地域の方の力は、本当に伊香立にしかない素晴らしい魅力です。

伊香立ならではの「人と人との関係性の土台」があってこその「地域力」、そして「いかだちマルシェ」だと感じています。

このように、住民1人1人の関係性の土台を構築することが、地方創生につながる第一歩ではないかと思っています。
(写真撮影:いなフォトプラス https://inaphoto.shiga.jp)

にぎわいの先にある、続いていく地域づくり

「いかだちマルシェ」の開催を通じて地域にはどのような変化が生まれたのでしょうか。


地域の方々に、伊香立に楽しみな恒例行事が1つ増えたと言っていただけるようになったのが大きな変化です。

第1回開催前のコロナ禍には、趣味で素晴らしい作品を作っているものの、家族や友人にプレゼントするだけといった方をたくさん見てきました。

私の母や職場の方もそうだったのですが、そういった姿を見ている中で「もっとたくさんの方に知ってもらえる機会があったらいいのに」という思いを抱くようになりました。

この地域にはほかにも、手芸やダンス、語学など、さまざまな得意分野を持つ方がいます。マルシェは、こうした一人ひとりの得意を多くの人に知ってもらえる場所でもあります。

趣味で作っていた作品が誰かに購入され、「ありがとう」と言われる。その経験が、次の作品づくりや新しい出店への意欲につながります。

地域の人が持つ力を地域の中で循環させ、伊香立で経済を回したい!という想いを、マルシェに重ねています。

今後の展望について教えてください。


多くの変化が生まれた一方で、マルシェが成長したからこそ、運営を支える地域住民の負担という新しい課題も見えてきました。

来場者が増えるほど、準備や当日の運営、片付けなどに必要な人手も増えていきます。

今後はマルシェの運営を伊香立だけですべて担うのではなく、近隣地域の事業者や出店者にも協力の輪を広げ、地域と地域がつながる形を模索していきたいです。

地方創生への糸口は、「若い人を地域から出さないこと」だけではありません。

進学や就職で一度外へ出たとしても、いつか「帰ってこられる」と思える場所であり続けること。そしてマルシェや地域行事を通して、人とのつながりや地域で愛された記憶を残すことが、将来の伊香立につながっていくと考えています。

おわりに


「いかだちマルシェ」の価値は、来場者数だけでは測れません。

地域の人が自分の得意を持ち寄り、新旧の住民が出会い、学校や福祉施設、事業者、行政ともつながっていく。その関係性そのものが、伊香立の地域力になっています。

「市が地域をつくる」のでも、「地域だけに任せる」のでもない。地域が主役となり、行政がその活動を後押しする。伊香立の実践は、大津市が進める住民主体・協働のまちづくりが、地域の現場でどのように形になっているのかを示す一つの事例といえるでしょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考・関連リンク


大津市|みんなでつくる「住民主体のまちづくり」について
https://www.city.otsu.lg.jp/kurashi/cs/k/k/32722.html
大津市|まちづくり協議会一覧
https://www.city.otsu.lg.jp/kurashi/cs/k/k/35279.html
大津市|大津市「結の湖都」協働のまちづくり推進条例
https://www.city.otsu.lg.jp/soshiki/010/1168/g/sk/1390126983138.html
伊香立公式サイト
https://ikadachi.jp/
伊香立|令和4年度 伊香立ふれあいのつどい(第1回マルシェ)
https://ikadachi.jp/event/festival_2022/
伊香立|令和5年度 伊香立ふれあいのつどい(第2回マルシェ)
https://ikadachi.jp/event/festival_2023/
伊香立|「第3回いかだちマルシェ」11月10日(日)に開催!
https://ikadachi.jp/ikadachi-marche-3/
写真撮影いなフォトプラス
https://inaphoto.shiga.jp

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