皆さんは日本三大盆踊りのひとつ、「郡上おどり」を岐阜県外でも楽しめるイベントがあることをご存じでしょうか?
今回は、京都岐阜県人会 事務局長の岩田 篤(いわた あつし)さんと、郡上市役所 商工観光部 観光課の蒲 明徳(かば あきのり)さんより「郡上おどり in 京都」開催までの経緯やイベントの魅力、そして今後の展望についてお話を伺いました!
岐阜県と京都府で郡上おどりの文化を繋ぐ活動に取り組んでいらっしゃるおふたりから見た地域の違いや、新しい場所でプロジェクトを立ち上げることの楽しさをお伝えできればと思います。
ぜひ最後までご覧ください!
プロフィール
岩田 篤さん(京都岐阜県人会 事務局長)
岐阜県南部の羽島市出身。大学進学のために2002年京都市に移住してから22年以上、京都市内で暮らしている。
大学卒業後、京都市内の印刷会社に就職し、クライアント企業の社長が偶然京都岐阜県人会の役員だったことをきっかけに同会に加入した。
2012年に京都岐阜県人会創立110周年の記念誌を制作し、2019年に同会事務局長に就任。「郡上おどりin京都」では実行委員長を兼任している。
京都岐阜県人会 HP
https://gifu.furusato-tsudoi.com/
蒲 明徳さん(郡上市役所 商工観光部 観光課)
2018年から5年間、郡上市役所の総務部財政課に所属。
その後、商工観光部観光課に異動し、郡上おどり運営委員会事務局担当としておどり本番に向けた準備・調整や、事前PRに従事している。
実際に郡上市で郡上おどりを継承していくために郡上市役所で行っている取り組みについては、こちらからご覧いただけます。
郡上が誇るおどりの文化を次の100年へ「郡上おどり保存活用計画」
https://madeinlocal.jp/area/gifu/gujo-city/001
郡上おどりとは
郡上おどりは、岐阜県中央部の郡上市で毎年開催されている盆踊りの祭典で、阿波踊り(徳島)・西馬音内盆踊り(秋田)と合わせて「日本三大盆踊り」と呼ばれています。
7月中旬から9月上旬にかけて30夜以上開催され、8月13日から16日までの4日間に行われる「徹夜おどり」では、その名の通り夜の8時から翌朝の5時頃までノンストップで踊り続けるのが特徴です。
郡上おどりの覚えやすい振り付けと日本一長い祭りという特徴は世界中から注目を集め、2022年11⽉にユネスコ無形⽂化遺産「⾵流踊」の1つに登録されました。
日本のど真ん中で踊りあかす! 城下町の歴史が生み出した「郡上おどり」
https://madeinlocal.jp/area/gifu/knowledge/023
「郡上おどりin京都」のはじまり
―「郡上おどりin京都」が京都で始まったきっかけについてご教示ください。
岩田:「郡上おどりin京都」は京都岐阜県人会主催のもと、京都の人に郡上おどりの魅力を伝えたいという想いで2008年にスタートしました。
当時の京都岐阜県人会の代表が郡上市明宝(旧:明方村)出身だったこともあり、この方を中心にイベントが始まったと聞いています。
本当の意味での地方創生は一部分の地域だけ注力しても長くは続かないので、自治体と連携して関係先を増やすことが重要だと考えています。
そのため同時開催のマルシェイベントも、郡上市を含む岐阜県全体をアピールできるように、岐阜県内のさまざまな地域・ジャンルのお店に出店していただいています。
本来、京都は京都で人を呼べる力があり、郡上おどりもどの地域でも注目を集められる非常に強いコンテンツ力があるので、京都の近郊のみならず関西全域にとっての定例イベントとして、郡上おどりが浸透していけばいいなと思います。
―より多くの方に「郡上おどりin 京都」を楽しんでいただくために凝らした工夫
岩田:実は2008年に初めて「郡上おどり in 京都」を開催してからの5~6年間は、ほとんど会員による手弁当の運営で、広報もままならない状態でした。
そこで私が印刷物やウェブサイトの制作を仕事にしていることもあり、イベントチラシ・ポスター・公式サイト・Facebookページを徐々に拡充し、オリジナル手ぬぐいなど物販品も企画・製造するようになりました。
郡上おどりは熱心なファンが多いので告知をしなくても毎年多くの方に来ていただけるのですが、今後は京都市近郊にお住まいの方や外国人観光客のようにたまたま会場近くを訪れた方にも楽しんでもらえるように、イベントの周知方法を工夫していかないといけないなと思っています。
蒲:京都市は郡上市と比べて6月の平均気温が高く(京都市:約23.3℃ / 郡上市:20.5度)、夜も非常に蒸し暑いので体感温度にもかなり大きな差があります。
そのため『天気が良いと暑すぎる』という反省点を解消するために、岩田さんの発案で2025年からはイベントの開始時間を30分後ろ倒しにしました。
また、前述のマルシェイベントでは、岐阜県名物の明宝ハムや郡上八幡の地産品などを多数取り揃えた物産展形式でブースを出店しています。
このように地域ごとの違いも意識して運営することが県外地域で開催する時の難しいところですが、おどりはもちろん岐阜県のグルメや文化も楽しめるイベントになっていると思います。
ホームではない地域でイベントを開催する理由
―郡上おどりのホームである岐阜県と京都府で開催することに違いはありましたか?
蒲:当イベントのキッカケが郡上市出身の方でもあるように、人の縁でつながって続いているのが京都府開催における特徴だと思います。やはり、京都岐阜県人会さんの存在が1番大きいです。
郡上おどりのように毎年開催されるイベントは、おどりファンとの交流の場としてのイメージが強いですが、開催場所の知名度もあって、周辺施設だけでなく県外の方や海外の方までどんどん関係人口を増やすきっかけへと派生させられるので、郡上おどりにとって京都は関西の拠点とも言えます。
従来の出張公演だと、屋形の設営ができる業者さんが県外にいないためイベントを展開するのが難しかったのですが、 15年以上にわたる京都府での開催を通してその仕組みがどんどん構築されて、今では愛知県や東京都でも開催できるようになりました。
そのため京都府での開催経験、そして京都岐阜県人会さんがいなければ、今の郡上おどり出張公演の原型はできていなかったと思います。
―今後この取り組みを通して、京都と岐阜の関係をどのように発展させていきたいですか。
岩田:京都市は大学が多いことから全国各地から学生が集まる都市で、岐阜との距離も近いため、進学先として京都を選ぶ岐阜県の学生も少なくはありません。
一方で京都岐阜県人会に限らず「県人会」という組織は高齢の世代が中心となる傾向が強く、現代の持続可能なコミュニティとしての存在意義が問われています。
しかし京都岐阜県人会には、岐阜県に親縁者がいなくても、ただ郡上おどりが好きだからという理由で加入している会員もいます。
こうした会員を増やすために「郡上おどり in 京都」のような開放的なイベントを継続的に開催していくことで、縁故や行政区分とは関係なく自然に新しいコミュニティが立ちあがっていけば嬉しいです。
蒲:私含め郡上市の職員も現地でイベントを支えていますが、やはりここにも費用はかかってくるため、岩田さんもおっしゃっているようにイベントを開催するだけでなく、いずれは民間の力でイベントを運営できるよう基盤を作っていくことが大事だと思います。
既に愛知県春日井市・名古屋市の栄では、おどりファンや現地のイベント会社さん主催のもと、民間の力で開催しているので今後はこのサイクルを全国に広めていきたいです。
今は種まきの時期なので、もしかすると来年、再来年の「郡上おどり in 京都」は全く違うものにさらに進化しているかもしれません。皆さんにはこうしたイベントの流動性も楽しんでいただければと思います。
おわりに
―この記事を読んでいる方々へお伝えしたいメッセージがあればお願いします。
岩田:「郡上おどり in 京都」は市井の有志メンバーが立ち上げたイベントであり、行政や地元企業さんから応援していただいているおかげで、無料イベントながら赤字を出さずに毎年1,000人規模の来場者を集めるイベントとして開催できています。
安定的して運営できるようになるまで紆余曲折あったものの「まずは自分たちでできる形で始めてみる」という最初の一歩があったから、ここまで成長できたのだと思います。
行政の方にイベントを持ちかけるのも、今まで自分でやったことがなかっただけで想像以上にハードルは高くなかったです。
「郡上おどり in 京都」のように大きな後ろ盾もなく手弁当で始まったイベントは全国的に見てもそう多くはないと思うので、この記事が地方創生に向けて新しいことを始めようとしている方のヒントになれば嬉しいです。
蒲:おどりを伴うお祭りは日本にたくさんありますが、そのなかでも郡上おどりは『見るおどりではなく、みんなで踊るおどり』であり、老若男女問わず一緒に踊ることができます。
そのため「郡上おどり in 京都」をきっかけに、郡上市に遊びに来たり、移住先の候補として取り入れてみたり、マルシェイベントで入手した名産品を今度はふるさと納税で購入してみるなど、さまざまな形で郡上市の関係人口の一員になっていただければ非常に嬉しいです。
簡単な振り付けですぐに踊れるようになるので、お近くに来た際はぜひイベントに参加して、岐阜県郡上市の夏の風物詩をお楽しみください!
関連ページ
郡上おどり in 京都HP
https://www.kyoto.gujo-odori.jp/
京都岐阜県人会 HP
https://gifu.furusato-tsudoi.com/
日本のど真ん中で踊りあかす! 城下町の歴史が生み出した「郡上おどり」
https://madeinlocal.jp/area/gifu/knowledge/023
郡上が誇るおどりの文化を次の100年へ「郡上おどり保存活用計画」
https://madeinlocal.jp/area/gifu/gujo-city/001
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