実は、夏の風物詩である日本のお祭りが近年、少しずつ消えているのをご存知でしょうか?

毎日新聞のアンケートによると、無形民俗文化財に登録されている祭りのうち31県で計102件担い手不足で指定解除あるいは休止状態になっているそうです。

今回は、そんな大規模なお祭りでも存続が難しくなってきている時代の中で自分たちの手で地域の文化を守り、次の100年へと継承するために活動を続ける岐阜県郡上市の「郡上おどり保存活用計画」のうち、3つの取り組みをご紹介します!

地域出身の方もそうでない方も、日本を代表する文化の1つである「郡上おどり」を支えるために何ができるのか、この記事を通して一緒に学んでいきましょう!

郡上おどりとは


郡上おどりは、岐阜県中央部の郡上市で毎年開催されている盆踊りの祭典で、阿波踊り(徳島)西馬音内盆踊り(秋田)と合わせて「日本三大盆踊り」と呼ばれています。

7月中旬から9月上旬にかけて30夜以上開催され、8月13日から16日までの4日間に行われる「徹夜おどり」では、その名の通り夜の8時から翌朝の5時頃までノンストップで踊り続けるのが特徴です。

郡上おどりの覚えやすい振り付けと日本一長い祭りが世界中から注目を集め、2022年11⽉にユネスコ無形⽂化遺産「⾵流踊」の1つとして登録されました。

「郡上おどり」の歴史にフォーカスした記事はこちらからご覧いただけます。

日本のど真ん中で踊りあかす! 城下町の歴史が生み出した「郡上おどり」
https://madeinlocal.jp/area/gifu/knowledge/023

そして、この文化を次の世代に遺していくために、保存継承に向けた方針や施策を示したのが「郡上おどり保存活用計画」です。

次項では「郡上おどり保存活用計画」が策定された背景から、地域での取り組みについてお伝えします。

「郡上おどり保存活用計画」策定の経緯


現在、郡上おどりの開催はお祭り当日に太鼓や笛などのお囃子を担う「郡上おどり保存会」と、行政を中心に観光協会や第三セクター、教育関係など地域の17の団体が集まり、イベントの運営を担う「郡上おどり運営委員会」の2つの組織によって成り立っています。

そして2022年に「郡上おどり保存会」が創立100周年を迎えたことを機に、担い手や若者のおどり離れを解決するために策定されたのが「郡上おどり保存活用計画」です

郡上おどり保存活用計画」では、これまで「地域の方のお祭りを盛り上げたい」という熱意で続いてきたおどりの存続が高齢化や若者・会員数の減少によって難しくなっているという課題を踏まえ、誰が・何をしていくのかに関わる具体的なロードマップが示されています。

そして関係団体や市民だけでなく全国の郡上おどりファンも担い手に含まれているのが、この計画の大きな特徴です。

郡上おどりは参加料無料かつ全員参加型のおどりという特性上、有料観覧席を設ける必要がないなど、運営委員会が直接的に資金を得る仕組みがなく、その運営資金の大部分が行政資金で賄われてきました。

しかし真に持続可能な運営体制とは、行政だけではなく市外のおどりファンも含めて皆が役割をもって盛り上げることができる環境であり、おどりに関わる人々が「誇り」や「生きがい」を持てるような社会を実現することがこの計画の目標です。

郡上おどり保存活用計画(ロードマップはこちら)
https://www.city.gujo.gifu.jp/admin/info/docs/11ee233e6b0d0139cc7b2841747820741a873bf6.pdf

「郡上おどり保存活用計画」の取り組み内容について


ここでは先述した「郡上おどり保存活用計画」の趣旨に沿って実際にどのような取り組みが現在企画されているのか、「郡上おどりサポーターズクラブ」の設立と自主財源の確保、そして夜マルシェの開催の3つを例にご紹介します。

【地元住民×おどりファン×地元の子どもたち】郡上おどりサポーターズクラブ


2025年6月より募集を開始した「郡上おどりサポーターズクラブ」は、既存の商工会や観光協会だけではなく、郡上市内外問わず次世代を担うおどりが好きな方で構成された新しいボランティアチームです。

このクラブは、重さ2t以上の踊り屋形を、おどり会場から次の会場まで手で押して移動させる「屋形曳き」という作業を担います。この屋形の上に乗って郡上おどりのお囃子を演奏するため、まさにお祭りのシンボルともいえる存在ですが、屋形も重量があり町伝いの移動も非常に負担が大きいため、特に人口の少ない地域だと地区会だけでは担いきれなくなってきています。

そこで誰かの情熱に依存したままの体制を変え、次の100年に遺していくために市内外から広くメンバー募集を開始しました。

全国の高校生が地元地域での修学旅行プランを立てて日本一を競う「観光甲子園」にて、地元高校(郡上高校)の「屋形曳き」が組み込まれたプランがグランプリを受賞し、子どもたちにとって「屋形曳き」は“大変な作業”ではなく“貴重な体験”であることが分かったのも結成の後押しになったそうです。

また「郡上おどりサポーターズクラブ」メンバーには、オリジナル手拭いを配布しております。

手拭いには皆で屋形を曳くための綱をあしらい、郡上八幡の「八」、そしてこれから先も郡上おどりが永く続いていくように「∞」のマークをイメージしたデザインです。

この手拭いのもとに支援の輪がつながって、現在多くのサポーターが集まってきています!

【地元住民×おどりファン×保存会】自主財源の確保


前述のように、これまでの郡上おどりの費用は主に郡上市によって賄われていました。

そこでこれからは「郡上おどり保存活用計画」の一環で、郡上市内の地区会・企業・個人に任意で募る地元協力金と、市外にアプローチするブース出店協賛金・おどり会場での寄附(投げ銭システム提灯協賛)で開催費用の安定化を図ります。

地元協力金は観光協会・商工会の会員に募るだけでなく、自治会(地区会)から任意の額での協力を依頼し、自分たちもこのおどりの担い手であるという気持ちを地元の方に強く持ってもらえるきっかけ作りの役割も果たしています。

そして、市内外問わず提灯協賛の受付を開始。企業ロゴの入ったオリジナル提灯が会場内に飾られます。郡上おどりは、例年およそ25万人が参加する非常に大規模なお祭りのため、広告宣伝効果も期待できますね!

郡上おどりの目玉である徹夜踊りは一晩中おどり明かすため、参加される皆さんを支えるドリンクなどのブース出店も受付を開始しました。いただいた出店料は郡上おどりの協賛金として活用されます。

さらに市外のファン向けに2025年からは、おどり会場にお賽銭箱を設置し、現金・ハンディ・QRコードなど、多様な決済方法で支援できるおどり会場での寄附(投げ銭システム)も採択予定だそうです。

このように、市内外・企業・個人とさまざまな層に合わせて参加しやすい形式を作り、郡上おどりを皆で盛り上げて存続できるように協力していく体制を作ることが「郡上おどり保存活用計画」の大きな目標です。

商工会青年部×おどりファン×地元住民】夜マルシェの開催


過去に、地元小学校に「郡上おどりの1番の楽しみは?」というアンケートをとった結果、最も多かった答えのひとつが「夜店がたくさん出ること」でした。

新型コロナウイルスが流行する前は80店舗以上の夜店が出ており、郡上おどりの立派な醍醐味のひとつでしたが、コロナ禍以降の夜店は30店舗ほどに縮小してしまいました。

そこで地区によっては夜店がほとんどないところもあるなど、昔と比べると寂しくなってしまったお祭りの現状を変えるべく始まったのが夜マルシェです。

こちらは商工会青年部有志から出たアイデアで、夜店が少ないとお祭りが盛り上がらないという地元の方からの熱いリクエストにお応えしつつ、担い手の熱意に依存しすぎないという思いがマッチングした取り組みです。

次世代を担う若者が打ち上げを楽しめるほどのごくわずかな利益を取れる仕組みで開催されるため、組織的な限界を防ぎモチベーションを向上させるメリットも期待できます。

郡上おどりが目指す次の100年


郡上市役所の観光課の蒲さんは、「郡上おどりは地域の「魂」「誇り」であり、どれだけ時代を経ても深く根付いているため、郡上おどりは行政主催のイベントだという認識が変わり、郡上市民全員で手がけるイベントだと思ってもらえるようにしていきたい」とお話ししてくれました。

2025年からの郡上おどりは、今まで以上に盛り上がること間違いなしです!

そしてMade In Localでは今回の紹介だけでなく、行政・地域の枠組みを越えて京都で郡上おどりの活動を広める方々にも密着していきます。

記事を通してまずは私たちが地域の文化を知ることで、子どもや次の世代に地域のお祭り文化を伝えていきませんか?

参考

毎日新聞. 祭りの「消滅」100件超す 都道府県の無形民俗文化財アンケート
https://mainichi.jp/articles/20241104/k00/00m/040/184000c
郡上市HP
https://www.city.gujo.gifu.jp/admin/info/post-1977.html
郡上おどり保存活用計画資料
https://www.city.gujo.gifu.jp/admin/info/docs/e864da7e55751cf719c6510cd8ce8b0a64a8d229.pdf
郡上おどり保存活用計画資料(概要版)
https://www.city.gujo.gifu.jp/admin/info/docs/11ee233e6b0d0139cc7b2841747820741a873bf6.pdf
日本のど真ん中で踊りあかす! 城下町の歴史が生み出した「郡上おどり」
https://madeinlocal.jp/area/gifu/knowledge/023

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