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みなさんの家のお雑煮は、どんなお雑煮でしょうか。
お正月になると当たり前のように食べているお雑煮ですが、実は地域によって驚くほど違いがあります。餅の形・味付け・具材には、その土地ならではの歴史や暮らしが反映されており、一杯のお雑煮から地域の文化が見えてきます。
今回は、文化庁がまとめた “お雑煮100選” をもとに、日本各地のお雑煮の魅力を紹介します。さらに、その背景にある食文化を学べる場所もあわせて紹介するので、美味しいものを“食べる” だけでなく、日本の豊かな食文化を “知る” きっかけになればうれしいです。
お雑煮から始まる食文化の旅へ、さっそく出発です!💨
「お雑煮100選」とは?
“お雑煮100選” は、2005年(平成17年)に文化庁文化財部伝統文化課によって公表された、日本各地のお雑煮を集める取り組みです。同年に『全国から集めた伝統の味 お雑煮100選』というタイトルで書籍化されました。
祖父母や父母から受け継がれてきたお雑煮や、地域に根づいてきたお雑煮などを一般公募で幅広く集め、日本の食文化にどれほどの広がりがあるのかを見つめることを目的としています。日本の多様な食文化の中でも、お雑煮は全国に広く存在しながら地域差が大きく、各地の食文化や暮らしの特徴が表れやすい料理であるため、日本各地の食文化を知る題材としても興味深いですね。
お雑煮100選の一覧を見ると、100選でありながら100件を超える掲載例が収録されています。これは厳密に100件へ絞り込むことよりも、多様なお雑煮をできる限り記録し残すことを重視した結果なのかもしれません。
さらにこの本の魅力は、地域性だけでなく家庭ごとの違いも感じられる点です。同じ地域でも家庭によって餅の形や味つけが違い、地域の食文化だけでなく、家庭の味があることに親しみを感じます。
そして何より、それぞれのお雑煮には美味しそうな写真が添えられていて、ページをめくるたびに思わずお腹が空いてしまいます。見ていると「お雑煮って正月だけじゃもったいない」と感じるほどで、今すぐ作ってみたくなるような魅力がぎゅっと詰まっています。
お雑煮はいつごろから食べられていたのか?
そもそもお雑煮はいつ頃から食べられるようになったのでしょうか。
国立歴史民俗博物館の安室知氏によると、お正月にお雑煮を食べる風習は室町時代にさかのぼるとされています。
もともとは神様に供えた餅や食材を人々で分け合って食べる風習と結びついており、現在のお雑煮の原型になったと考えられています。
こうしてお雑煮は各地へ広がる中で、その土地の食材や食文化を取り入れながら少しずつ姿を変えていきました。では、なぜ地域によってこれほど違いが生まれたのでしょうか。
お雑煮は地域によってどんな違いがあるのか?
お雑煮の違いは、“お餅の形”・“調理方法”・“味付け” に分けて見ることができます。
まずお餅の形は、東日本では四角い “角餅”、西日本では丸い “丸餅” が多いとされています。
調理方法にも違いがあります。東日本では、角餅をあらかじめ焼いてから汁に入れることが多いのに対し、西日本では丸餅をそのまま煮て柔らかくすることが多いとされています。
さらに味付けでは、東日本はしょうゆベースのすまし汁、西日本は白みそを中心とした味噌仕立てが多い傾向があります。
また、こうした違いは単なる好みではなく、歴史的な背景とも関係しています。たとえば江戸ではしょうゆ文化が発達したこと、関西では白みそ文化が根づいていたことなどが、お雑煮の味にも影響したとされています。
ただし、これらはあくまで大まかな傾向であり、実際には県ごと・地域ごとにさらに細かい違いがあります。同じ県の中でも家庭や地域によって違いがあるのも、お雑煮の面白さです。
都道府県ごとのお雑煮の違いを詳しく見たい方は、🔗全国お雑煮図鑑 もおすすめです!
お雑煮から見える日本の食文化
ここでは “お雑煮100選” に収録された掲載例をもとに、京都府・香川県・長崎県という3つの地域に注目しながら、それぞれの食文化を見ていきます。
同じお雑煮という料理でありながら、なぜここまで違いが生まれるのでしょうか。その背景には、土地ごとの歴史・気候・人々の暮らし方が深く関わっています。
そしてそれぞれの地域については、実際にその文化や食の背景に触れることができる場所もあわせて紹介します。料理として味わうだけでなく、「なぜこの形になったのか」を知ることで、お雑煮という着眼点から地域の歴史や文化を知るきっかけになるはずです。
①京都府:白みそ雑煮から見る京料理文化

🏅お雑煮100選掲載例:白みそ雑煮(杉崎みつ子さん)・わが家の雑煮(東浦綾子さん)・白みそ雑煮(人見純子さん)・京雑煮(吉井幸子さん)
京都府で正月に食べられるお雑煮は、丸餅・頭芋(かしらいも/里芋の親芋)・大根・金時人参などを入れた “白みそ雑煮” です。
京都府では古くから都として発展した歴史の中で、素材の味やだしを生かす繊細な食文化が育まれてきました。白みそ雑煮も、そうした京料理の特徴を感じられる料理のひとつです。
白みそは京都の食文化を語るうえで欠かせない存在です。平安時代には貴族の間で食べられる貴重な食品でしたが、室町時代になると味噌づくりが広まり、保存食として庶民の生活にも浸透していきます。
中でも白みそは、発酵期間が短く、塩分も控えめで仕上げられるため、まろやかで甘みのある味わいになるのが特徴です。こうした背景から、京料理の上品さとやさしい味の文化を象徴する存在となりました。
白みそ雑煮を通して見えてくる京都の食文化を実際に学べる場所としては、“京の食文化ミュージアムあじわい館” があります。京野菜や伝統食を通して京都の食の歴史に触れることができ、だしの飲み比べやさまざまな展示物から体感的に学ぶことができます。
京の食文化ミュージアムあじわい館
📍住所:〒600-8813 京都府京都市下京区中堂寺南町130番地 京都青果センタービル3階
🚶アクセス:JR丹波口より徒歩3分、京都リサーチパーク前バス停より徒歩2分
🔍営業時間:8:30~17:00、毎週水曜日休館、入館無料
🔗公式HP:https://www.kyo-ajiwaikan.com/
②香川県:あん餅雑煮から見る砂糖文化

🏅お雑煮100選掲載例:白みそあん餅雑煮(田所早苗さん)・あん餅雑煮(水尾由紀さん)・あん餅雑煮(宮田恵生さん)
香川県で正月に食べられるお雑煮は、白みそ仕立ての汁に、甘いあん入りの丸餅を入れた“あん餅雑煮” です。あん餅に、家族円満の願いを込めて輪切りにした大根や金時人参が加わり、甘さと塩味が重なり合う独特の味わいが生まれます。
甘いお雑煮が作られた背景には、香川県の気候と産業の歴史があります。香川県では和菓子文化も発達しており、砂糖を使った食べ物が地域の食文化として親しまれてきました。江戸時代、温暖で雨の少ない気候を活かしてサトウキビ栽培が奨励され、讃岐地方では砂糖づくりが大きく発展していきました。
しかし当時、砂糖は非常に貴重なもので、日常的に口にできるものではありませんでした。そのため明治時代頃になると、砂糖は “特別な日のためのご褒美” として扱われるようになり、正月の料理に少しずつ取り入れられていき、その象徴が “あん餅雑煮” です。
こうした歴史を今に伝える存在として、江戸時代から続く “三谷製糖” では、当時の製法を守りながら和三盆が作られており、実際にその味に触れることで、讃岐の砂糖文化を体感することができます。
三谷製糖羽根さぬき本舗
📍住所:〒769-2902 香川県東かがわ市馬宿156-8
🚶アクセス:JR讃岐相生駅(徒歩約8分)
🔍営業時間:9:00~17:30、毎週火曜日休業、体験・見学は事前予約必須
🔗公式HP:https://wasanbon.com/
③長崎県:しっぽく雑煮から見る郷土食文化

🏅お雑煮100選掲載例:具雑煮(谷口千代さん)
長崎県で正月に食べられるお雑煮は、“しっぽく雑煮(具雑煮)” です。鶏肉・アナゴ・豆腐・野菜・丸餅などをたっぷり使った具だくさんの雑煮で、土鍋で煮込んで作られるのが特徴です。
長崎県は古くから海外との交流が盛んな地域として発展し、中国や西洋の文化を取り入れながら独自の食文化を築いてきました。
しっぽく雑煮の起源については、江戸時代初期の島原の乱(1637年)と結びつけて語られることがあります。城に立てこもった一揆軍が長い籠城生活を送る中で、餅・山の幸・海の幸を合わせて煮込み、限られた食料の中で栄養をとるために工夫された料理が始まりだという説です。また、一説には総大将である天草四郎時貞が考案に関わったと伝えられています。
具雑煮は、材料の豊富さも特徴です。十数種類の食材が使われ、豊かな長崎の産物がひとつにまとまったような料理です。
現在では、正月料理としてだけでなく、島原を訪れる観光客にも親しまれており、しっぽく雑煮を目的に足を運ぶ人もいます。
しっぽく雑煮を通して見えてくる長崎の食文化を学べる場所としては、“長崎歴史文化博物館” があります。長崎の歴史や海外交流の文化とともに、食文化の広がりについても知ることができ、料理の背景をより深く感じることができます。
長崎歴史文化博物館
📍住所:〒850-0007 長崎県長崎市立山1丁目1番1号
🚶アクセス:JR長崎駅(徒歩約14分)
🔍営業時間:8:30~19:00、毎月第1・第3月曜日休館、入館無料、別途観覧料必要
🔗公式HP:https://www.nmhc.jp/
おわりに
お雑煮は、餅と具材を煮込んだシンプルな料理です。しかし、その一杯の中には地域の歴史や産業・人々の願い・家庭ごとの思い出が詰まっています。
今回紹介した京都の白みそ雑煮には都の食文化が、香川のあん餅雑煮には砂糖づくりの歴史が、長崎の具雑煮には豊かな食文化や交流の歴史が反映されていました。同じお雑煮でも、その背景は地域ごとに大きく異なります。
“お雑煮100選” は、そんな日本各地の食文化の豊かさを教えてくれる一冊です。
旅行先で郷土料理を味わうことはあっても、その背景にある歴史や文化まで知る機会は意外と多くありません。だからこそ、お雑煮に限らず、旅先で郷土料理を味わう際には、その土地の歴史や文化にも目を向けてみてください。
きっとその味はもっと奥深く、そして旅の思い出はより豊かなものになるはずです。
「お雑煮100選」の受賞者一覧
北海道
001 たい菜雑煮:浪越由美さん
002 鮭粕雑煮:村田ナホさん
003 具だくさんのあん餅雑煮:矢野ゆかりさん
岩手県
004 いくらと親子雑煮:佐々木意子さん
005 おひきな雑煮:佐々木善子さん
006 ごまだれ雑煮:澤田ツマ子さん
宮城県
007 田舎雑煮:佐々木とめ子さん
008 仙台風富田家のお雑煮:富田照美さん
009 鶏雑煮:畠つねさん
山形県
010 天童市の具だくさん雑煮:佐藤富士子さん
011 具だくさん雑煮:佐藤好子さん
012 松竹雑煮:情野容子さん
013 文殊雑煮:情野容子さん
014 納豆・山菜雑煮:堀すみ子さん
茨城県
015 のっぺい風雑煮:関戸斐子さん
016 豆腐餅:渡辺里海さん
群馬県
017 にごり:冨喜美さん
埼玉県
018 我が家の雑煮:皆川大樹さん
千葉県
019 わが家の雑煮:伊藤和子さん
020 はば雑煮:岡本ひささん
021 わが家の雑煮:金井芳子さん
東京都
022 東京雑煮:浅井咲子さん
023 わが家の雑煮:鈴木民子さん
024 わが家の雑煮:田口麻紀子さん
025 わが家の雑煮:新原惠子さん
026 関東風雑煮:根津利美さん
027 わが家の雑煮:二上寿亀江さん
神奈川県
028 わが家の雑煮:飯田健介さん
029 小田原宿角吉のお雑煮:小田原やんべぇ倶楽部
山梨県
030 わが家の雑煮:栃窪ちづるさん
031 山の都の孫いもと糸こんぶのお雑煮:古山登茂代さん
富山県
032 下山雑煮:稲村光枝さん
033 越中雑煮:萩生雅人さん
034 越中富山のお雑煮:清水美紀子さん
福井県
035 御食国若狭おばまのお雑煮(黒砂糖のせ):御食国若狭おばま食文化館
036 福井のお雑煮:福井県農林水産部食糧安全・流通対策課
新潟県
037 越後雑煮:遠藤澄枝さん
038 わが家の雑煮:三膳八千代さん
039 田舎雑煮:鈴木ヒサ子さん
040 田舎風雑煮:鈴木喜代さん
041 世界一のお雑煮:袖山由美子さん
042 鮭入り雑煮:南雲ハナ子さん
043 新潟雑煮:広瀬裕子さん
044 わが家の雑煮:山本幸子さん
長野県
045 わが家の雑煮:大久保善子さん
046 馬肉入りトッピング雑煮:白石敞子さん
047 年とりのおおじる:西村久子さん
岐阜県
048 男女別椀のお雑煮:久保田敬子さん
049 わが家の雑煮:後藤久典さん
静岡県
050 年初めのお雑煮:河原崎吉乃さん
051 尾張のお雑煮:古橋美知子さん
京都府
052 白みそ雑煮:杉崎みつ子さん
053 わが家の雑煮:東浦綾子さん
054 白みそ雑煮:人見純子さん
055 京雑煮:吉井幸子さん
大阪府
056 お祝膳・みそ雑煮・菜雑煮・ふくあかし:植田啓司さん
057 泉州田舎雑煮:山中弓子さん
兵庫県
058 もうかる雑煮:上田恵子さん
059 ぶり雑煮:浦野孝子さん
060 わが家の雑煮:幸田泉さん
061 わが家の雑煮:坂本皇帝さん
062 白みそ仕立てのお雑煮:高木慶子さん
奈良県
063 わが家の雑煮:井上平裕さん
064 大和のお雑煮:井上みね香さん
065 わが家の雑煮:河端節子さん
066 奈良・大柳生のお雑煮:窪田雅子さん
067 きな粉雑煮:東吉野村立小川小学校3年生
068 頭いものお雑煮:中山容子さん
和歌山県
069 福々雑煮:坂口眞由美さん
070 わが家の雑煮:谷口佳子さん
鳥取県
071 あずき雑煮:臼井孝子さん
072 とち餅雑煮:小田富見男さん
073 ぶりのお雑煮:高橋紀久子さん
074 のり雑煮:成相節子さん
075 あずき雑煮:成相節子さん
076 ぜんざい風鳥取のお雑煮:藤原須美恵さん
島根県
077 おばあちゃんのお雑煮:小川綾子さん
078 福寿椀:野村准也さん
岡山県
079 塩ぶり雑煮:中桐美津江さん
080 わが家の雑煮:宮尾美苗さん
広島県
081 わが家の雑煮:中川治子さん
082 ふく雑煮:浜野照美さん
083 福のお雑煮:藤井知さん
084 尾道のお雑煮:見永八重子さん
山口県
085 お正月のお雑煮:秋村芳子さん
086 干しゆのお雑煮:米重しのぶさん
香川県
087 白みそあん餅雑煮:田所早苗さん
088 あん餅雑煮:水尾由紀さん
089 あん餅雑煮:宮田恵生さん
愛媛県
090 焼きあゆのお雑煮:味村英子さん、西川静子さん
091 おばあちゃんの鶏雑煮:中村洋さん
福岡県
092 わが家の雑煮:柴田国広さん
093 わが家の雑煮:春木享子さん
094 博多雑煮:東原だいさん
095 博多雑煮:村田和夫さん
096 博多雑煮:山嵜喜美江さん
佐賀県
097 博多風雑煮:瀬戸口明美さん
長崎県
098 具雑煮:谷口千代さん
熊本県
099 わが家の雑煮:園田優佳さん
100 あんこ餅入り具雑煮:田中喜代子さん
101 きびあん餅雑煮:本山裕子さん
鹿児島県
102 わが家の雑煮:五反田花菜さん
103 わが家の鹿児島風雑煮:冨宿勝子さん
104 薩摩雑煮(伝武家風):花田ミツさん
105 焼きえびのお雑煮:福元正子さん
参考
・文化庁文化財部伝統文化課(2005)『全国から集めた伝統の味 お雑煮100選』女子栄養大学出版部、p2, 6~7, 34~39,
・るるぶKids|全国の「お雑煮」の違いは?地域別の味付け・具材・もちの形などを解説!
・全日本雑煮大図鑑
・東京ガスウチコト|「あなたのお雑煮は何味?」お雑煮の由来と地域性による違い
・農林水産省|白味噌の雑煮 京都府
・ヤマク食品株式会社|白味噌の文化
・公式HP|京の食文化ミュージアムあじわい館
・農林水産省|あん餅雑煮 香川県
・ビジネス香川|讃岐の砂糖
・公式HP|三谷製糖羽根さぬき本舗
・農林水産省|具雑煮/島原具雑煮 長崎県
・島原市HP|具雑煮
・公式HP|長崎歴史文化博物館
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