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こんにちは!ライターのゆららです。
今回は、日本を代表する大企業をいくつも生み出した「近江商人」について、ご紹介します!
伊藤忠商事・トヨタ自動車・西武鉄道・高島屋・住友財閥・三井財閥・ワコール・東レ・日本生命…
実はこれら全て、近江商人にゆかりがある企業なんです!こうして並べると、その影響力の大きさに驚きますよね。
では、なぜ近江商人はこれほどまでに多くの大企業を生み出せたのでしょうか?
その秘密は、彼ら独自の仕事術やマインドセットにありました。
今回は、そんな近江商人の知恵に迫ります!
そもそも「近江商人」って?
近江商人(おうみしょうにん)とは、主に江戸時代に活躍した、現在の滋賀県(近江国)出身の商人たちのこと。
大阪商人・伊勢商人と並び、日本三大商人の1つに数えられています。
近江商人の最大の特徴は、全国を行商しながら商いを広げたこと。自分の藩の外へ出ることが珍しかった江戸時代に、全国へ進出し、よその土地で成功を収めた近江商人は、まさに異色の存在でした。
そんな警戒されてもおかしくない状況の中、見知らぬ土地で、彼らは一体どのようにして受け入れられたのでしょうか?
現代のCSR!「三方よし」の心得
その秘密は、近江商人を語るうえで欠かせない「三方よし」にあります。
「三方よし」とは「売り手によし・買い手によし・世間によし」という意味で、単に利益を追求するのではなく、社会全体にとって良い商売をしなさいという教えです。
売り手・買い手双方の利益を考えるのはビジネスの基本ですが、「世間」を重視したところにその特色があります。
地域に貢献した近江商人の取り組み
実際に、近江商人は自分たちの利益の一部を地域社会に還元していました。
具体的には、このような取り組みが当時の文書に数多く書き残されています。
・橋の架け替え工事や常夜灯の設置費用を負担
・思いがけない利益が出た際の、学校への寄付や従業員への配分
・自分の所有地に桜や紅葉を植え、地域の人が楽しめる場をつくる
こうした活動のおかげで、近江商人は各地で歓迎されるようになったんですね!
さらに、彼らは都市部よりも一般に商いには不利とされる地方に積極的に進出し、商売を広げました。
地域に貢献しつつ、都市部の最新情報と地方の情報を交換することで、ビジネスチャンスを広げていったのです。
現代でも、この「三方よし」は多くの企業が企業理念に取り入れています。
今では企業が行う社会貢献をCSRと呼びますが、江戸時代の近江商人に、その源流があったんですね!
「売って悔やむ」徹底したお客様ファースト
そうした地域への貢献と同時に、近江商人は「買い手によし」の精神も徹底しています。
前述のとおり、近江商人は経済的に恵まれない地域でも商売を行っていたため、商品の価格を低く抑える必要がありました。
ここで、ライバルがいないからといって粗悪品を売ることはせず、質の高い商品を掛け値なしで提供するという、正直で勤勉な商売を行ったのだそうです。
また当時は物の流通が不安定だったため、他の商人たちは「品薄の時に高く売る」「地域ごとの価格差を利用する」といったことをよく行っていました。
これは一見、ビジネスの成長を思えば合理的なやり方に思えますが、買い手にとっては嬉しいことではありません。
そんな中、近江商人はその真逆のことを行いました。
彼らが心がけていたのはなんと「売って悔やむ」ことだったんです!
また買いたいと思わせる「売って悔やむ」の精神
「売って悔やむ」、一瞬「どういうこと?」と思いますよね。
普通、商品を売った後にその価値が上がると「売るのを待てばよかった…」と、損をしたように感じます。しかし近江商人は、買った商品の価値が上がることでお客さまが喜び「またこの人から買おう」と思ってもらえれば、それが1番よいと考えていました。
だから、その時の最大価格で売ることより「ちょっと惜しい」と思える価格で売ることを心がけたのです。
目先の利益よりお客様の利益を優先し、長期的な信頼を大切にするこの価値観が、結果的に今も続く大企業を生み出したんですね!
これらのマインドセットが近江で育まれた理由
ここまで、近江商人の特徴的なマインドセットについて見てきました。まるで聖人かのような、先進的で成熟した考え方には、本当に驚かされます。
しかしなぜ、近江商人はこのような達観した価値観をもつことができたのでしょうか?
その背景には、彼らの本拠地である近江国の土地柄が深く関係しています。
近江国が生んだ経営理念
近江国は、仏教天台宗の総本山・比叡山延暦寺のおひざもとです。
よって仏教への造詣が非常に深く、この地で生まれ育った近江商人は「仏様の御心にかなう商売」をすることを、幼いころから叩き込まれたといいます。
だから、自分だけの利益ではなく「みんなが嬉しいこと」を優先できたんですね。
現代の日本で強い信仰心を持つ人は多くありませんが、「常に自分の良心に従って行動する」姿勢は、時代を超えて大切なことだと思います。
信仰という揺るがぬ精神的な拠りどころがあったことも、近江商人の大きな強みだったのかもしれません。
おわりに
いかがでしたか?
商人と聞くと「お金儲け第一」のようなイメージがありますが、近江商人はそれをことごとく覆すやり方で、商売を成功させたんですね!
「三方よし」「売って悔やむ」― 彼らが大切にしたのは、自分だけでなく周りの人すべてが幸せになる商売でした。
この考え方は、時代を超えて今も多くの企業に受け継がれています。
ちなみに、滋賀県には近江商人ゆかりの観光スポットがたくさんあります!
彼らの哲学を知ったうえで行ってみると、また一段と深い趣深さが感じられるかもしれません。記事の最後にまとめましたので、ぜひチェックしてみてくださいね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
【付録】近江商人ゆかりのスポット
① 近江日野商人館 |近江日野商人の名家をそのまま利用した資料館です。建物内部の見学に加え、歴史にまつわる展示や企画展を楽しめます。
所在地:滋賀県蒲生郡日野町大窪1011
電話番号:0748-52 -0007
営業時間:9時~14時
料金:大人300円、小人120円
アクセス:近江鉄道日野駅 近江バス 10分 大窪下車
URL:https://hinosyouninkan.jp/
② 新町通り(資料館)|江戸時代末期~明治の古い町並みが保存された地域です。西村家屋敷跡の資料館では、当時の生活を知ることができます。
所在地:滋賀県近江八幡市新町
電話番号:0748-32-7003
料金:無料
アクセス:近江八幡駅 バス 6分 小幡町資料館前下車
URL:https://www.omi8.com/omihachiman/local-history/machinami/
③ 五個荘金堂の町並み|東近江市に残る、歴史的街並みです。近江商人の発祥地として、商人の本宅が2館現存しています。
所在地:滋賀県東近江市五個荘金堂町
電話番号:0748-29-3922
営業時間:10:00~16:30
料金:大人400円、小人200円
アクセス:JR琵琶湖線 「能登川」 下車 バス 10分 「ぷらざ三方よし」下車徒歩5分、または近江鉄道/本線 「五箇荘」 下車 徒歩 30分
URL:https://x.gd/33D6P
④ 近江商人博物館|近江商人の理念を伝える博物館です。商法や家訓、暮らし、教育など、様々な角度から近江商人を紹介しています。
所在地:滋賀県東近江市五個荘竜田町583
電話番号:0748-48-7101
営業時間:9:30~17:00
料金:大人300円、小・中学生150円
アクセス:JR能登川駅から近江鉄道バス「八日市駅行」金堂下車徒歩10分、またはぷらざ三方よし前(観光案内所)下車徒歩15分
URL:https://e-omi-muse.com/omishounin/index.html
参考
近江商人に学ぶ|サンライズ出版編集部(2012年)
Q&Aでわかる近江商人|三方よし研究所(2010年)
三方よし研究所 公式サイト
https://sanpo-yoshi.net/
近江商人と三方よし|伊藤忠商事
https://www.itochu.co.jp/ja/about/history/oumi.html
近江商人について|近江八幡観光物産協会
https://www.omi8.com/omihachiman/local-history/goroku/
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