ほかほかのご飯をふんわり握り、パリっとした香ばしい海苔でくるりと包んだ“天むす”。ひと口頬張ると、ぷりっとしたエビの天ぷらのうま味がじゅわっと口いっぱいに広がり、思わずもう1つ手が伸びてしまいます。

「名古屋名物」のイメージが強い天むすですが、発祥は愛知県ではなく、お隣の三重県です

今回は、天むす誕生のきっかけ名古屋名物として親しまれるようになった理由をひも解きながら、元祖「天むす」を味わえる名店や、周辺で立ち寄りたいスポットもあわせてご紹介します!

天むすってどんな食べ物?


天むすは、小さなエビの天ぷらを具にした一口サイズのおにぎりです。

一般的なおにぎりとは異なり、天ぷらにしっかり味が付いているため、ご飯にはあえて塩を振らずに握り、エビのうま味を引き立てる工夫がされています。

また、ふきの佃煮である「きゃらぶき」が添えられるのも特徴です。甘辛い味わいとしゃきっとした食感が、天ぷらの風味を引き立て、最後まで飽きずに楽しめます。

食べやすさとおいしさへの工夫が凝縮されていることが、天むすが長く愛されている理由なのかもしれません。

👀ひとくちメモ:三重県と愛知県の天むすの違いは?


同じ「天むす」でも、発祥の地である三重県津市と、名古屋名物として広まった愛知県では、少しずつ特徴が異なります。

三重県津市の元祖店「千寿」では、注文を受けてからエビの天ぷらを揚げるなど、できたてのおいしさを大切にしています。一方、愛知県名古屋市の天むすは、お弁当や手土産として広まったことで、冷めてもおいしく食べられる工夫が重ねられてきました。

三重県では「できたてを味わう文化」愛知県では「持ち帰って楽しむ文化」の中で親しまれるようになった天むすは、土地に合わせて姿を変えながら、多くの人に愛されてきたのです。

天むすは愛知県のお隣、三重県で生まれた!


天むすのルーツは、三重県津市大門にある天ぷら定食店「千寿」です。

1955年(昭和30年)、「千寿」の初代店主である水谷ヨネさん、忙しい中でも、夫に栄養のある食事を食べてもらいたいと考え、クルマエビの天ぷらを食べやすい大きさに切り、おむすびの中へ入れたことが天むすの誕生のきっかけです。

「忙しくても、おいしいものを食べて元気になってほしい」という家族を思う気持ちから生まれた一品が、後に全国で知られる名物になるとは、当時は誰も想像していなかったのではないでしょうか。 

誕生した当初は、夫や従業員のまかないとして作られていましたが、常連客にも振る舞うようになると、やがて「千寿」の裏メニューとして提供されるようになりました。

その後、1959年(昭和34年)には、「千寿」は天むす専門店となり、1965年(昭和40年)には「天むす」を商標登録しました。

1人の店主の小さな工夫から始まった天むすは、大切な誰かを思う気持ちが形になった、心温まるご当地グルメなのです。

なぜ名古屋名物になったの?


三重県で生まれた天むすが、なぜ名古屋名物として全国に知られるようになったのでしょうか。

1981年、愛知県名古屋市で時計店を営んでいた藤森晶子さんは、不景気の影響を受け、新たな商売を考える中で思い出したのが、以前津市で食べた「千寿」の天むすでした。

「このおいしさを多くの人に届けたい」という思いから、藤森さんは何度も津市の「千寿」を訪れ、天むすの販売を願い出ました。しかし、水谷夫妻は長年大切に守ってきた味を簡単に託すことはできず、何度も断ったといいます。

約1か月にわたる交渉の末、天むすを広めるための積極的な宣伝をしないことを条件に、のれん分けが認められ、「千寿」の味や作り方は名古屋へと受け継がれていきます。

開店当初は思うように客足が伸びませんでしたが、口コミやテレビ紹介をきっかけに人気が広がり、全国的に知られるご当地グルメへと成長しました。

天むすの「生みの親」である水谷ヨネさんと、その魅力を広めた「育ての親」である藤森晶子さん。それぞれの地域で注がれた愛情があったからこそ、私たちは今、全国で天むすを味わうことができるのです。 

天むす発祥の店「めいふつ天むすの千寿」


天むす発祥の店として知られる「めいふつ天むすの千寿」は、三重県津市大門にあります。

初代店主である水谷ヨネさんの夫への思いやりから生まれた天むすは、試行錯誤を重ね、現在まで昔ながらの味が大切に受け継がれてきました。

千寿の天むすは、素材の良さを生かした味付けにこだわり、エビの天ぷらとご飯のうま味を楽しめる一品です。

📌めいふつ天むすの千寿
📍住所:〒514-0027 三重県津市大門9-7 
・🚙アクセス:JR・近鉄「津駅」から車で5分
・📅営業時間:9:30~17:30(定休日:毎週日曜日、第3月曜日)
・📞電話番号:059-228-6798
・🔗公式サイト:めいふつ天むすの千寿

天むす名店から徒歩圏内!一緒に巡りたい津市スポット


発祥の地で天むすを味わった後は、津市ならではの歴史やグルメも楽しんでみてはいかがでしょうか。「千寿」周辺には、徒歩で巡れる魅力的なスポットが点在しており、今回は2つに厳選してご紹介します。

① 「千寿」から徒歩約5分!津の歴史を感じる「津観音」


日本三大観音の一つとして知られる「津観音」は、津市民から「観音さん」の愛称で親しまれている歴史ある寺院です。境内には本堂や五重塔などがあり、落ち着いた雰囲気の中で津の歴史を感じられます。

天むすを味わった後に立ち寄って、津市の文化や長く受け継がれてきた街の魅力を楽しんでみてはいかがでしょうか。

📌津観音(正式名称:恵日山 観音寺大宝院) 
📍住所:〒514-0027 三重県津市大門32-19 
・🚙アクセス:JR・近鉄「津駅」から車で6分、「めいふつ天むすの千寿」から徒歩約5分
・📅拝観時間:7:00~20:00
・🎫拝観料:無料(資料館・本堂内部は500円)
・📞電話番号:059-225-4013
・🔗公式サイト:津観音


② 「千寿」から徒歩約3分!津市民に愛される甘味処「蜂蜜まん本舗」 


津市民に長く愛される名物「蜂蜜まん」を味わえるお店です。焼きたての蜂蜜まんは、パリッとした皮の中に熱々のこしあんが入り、ほんのり蜂蜜の風味が広がる素朴な甘味として親しまれています。

天むすを味わった後のデザートや、散策のお供にもおすすめです。

📌蜂蜜まん本舗
📍住所:〒514-0027 三重県津市大門8-5
・🚙アクセス:JR・近鉄「津駅」からバスで6分、「めいふつ天むすの千寿」から徒歩約3分
・📅営業時間:9:45~17:00(休業日:水曜日、不定休あり)
・📞電話番号:059-228-3012
・🔗関連サイト:蜂蜜まん本舗

おわりに


名古屋名物として広く知られる天むすですが、その始まりは三重県津市の小さな天ぷら店でした。

忙しい日々の中で生まれた1つのまかないが、多くの人々に親しまれながら全国へ広がり、今では世代を問わず親しまれるご当地グルメとなっています。

三重県を訪れる機会があれば、ぜひ発祥の地で元祖の天むすを味わい、その歴史にも思いを巡らせてみてください。

参考


郷土料理ものがたり|天むす
めいふつ天むすの千寿|こだわり
たべまろ|名古屋名物「天むす」の美味しいお店7選!発祥や特徴も紹介
金シャチ横丁|【名古屋めし】人気グルメ「天むす」の歴史は?金シャチ横丁で味わう絶品メニューも紹介!
CHAKAS|天むすの歴史とは?名古屋発祥の理由と全国に広がった背景
note+|なぜ名古屋名物に?「天むす」が三重県津市からやってきた、ある夫婦の熱すぎる物語

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