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アンバサダー
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キャンパスを越えた地域の

マイクロアントレプレナー

(小さな起業家) を創出する

地方創生アンバサダー
駒澤大学経済学部現代応用経済学科 教授
長山 宗広
横浜国立大学大学院環境情報学府博士後期課程を修了し経営学の博士号を取得。信金中央金庫総合研究所、中小企業総合研究機構などを経て、2007年より本学経済学部准教授。2013年より現職。日本中小企業学会理事や日本地域経済学会理事長、さわやかリサーチフェローや中小企業産学官連携センター(JCARPS)副理事長などに就いている。中小企業診断士として経営コンサルティングも手掛けている。

Q1:地方創生やSDGsに関心を持ったきっかけ

私は、「地方創生」ならびに「SDGs」という言葉が広まる以前「地域活性化」や「地域振興」といった言葉が幅広く使われていた頃より、こちらの分野にまつわる研究を30年以上進めてまいりました。

信金中央金庫に勤めていた頃(1992年~2007年)は、信用金庫を介して中小企業を支援する業務に関わっていました。その際、中小企業は大企業とは異なり、地域との繋がりが密接であって、地域の経済のみならず地域の暮らしや社会を支えていることに気がつきました。

1990年代は国際化と情報化が進展した時代です。大量かつ安全な輸送を可能にし大幅な輸送コストの削減に成功したコンテナ革命もありました。日本では、円高の影響もあって、大企業を中心に生産拠点の海外移転が加速し、一方で海外からの安価な輸入製品の勢いに押され、メイドインジャパンのものづくりが衰退し、「産業の空洞化」が起こりました。バブル経済崩壊後、90年代後半には、日本全体が金融危機に陥り、不良債権問題の処理によって、多くの企業が倒産に追いやられます。特に、地方の地域経済にとっては厳しい時代でした。

私は、長らく、静岡県浜松市の地域産業を調査してきました。当時の浜松地域を例に挙げますと、自動車産業を中心とする大企業の城下町であった同市は円高の影響から大企業が生産拠点を海外に移すことが決定し、国内の下請けの中小企業が相次いで仕事を失うといった「産業空洞化」が発生しました。このようなグローバリゼーションによる影響は、現在もなお地方の地域産業が抱える問題の一つです。

こうしたなか、2003年から地域金融機関によるリレーションシップパンキング政策が始まります。この政策は「地域密着型金融」を通じて、中小企業および地域経済の再生を目指す支援施策です。当時、私もこの仕事に携わっており、たとえば、衰退した温泉地に実際に赴き、再生請負人として旅館の経営コンサルティングを担っていました。再生支援を通じて旅館1軒の売上利益を上げることには成功したのですが、その後エリア内で熾烈な価格競争が起こり、結果的に温泉地としてのブランドイメージを毀損する、といった問題に直面しました。個別の企業再生だけではなく、地域の面的な再生が必要なのだと痛感させられました。

このような経験から得た気づきをもとに、地域産業の担い手である中小企業の再生そして新たなベンチャービジネスを興すことこそ、「産業の空洞化」を解消し、「地域活性化」につながるという考えに至りました。

駒澤大学で立ち上げた地域協働研究拠点(ラボラトリ)にてシンポジウム講演

Q2:過去と現在の研究内容について

2000年代になると、日本では地域活性化策として、「産業クラスター政策」を展開します。従来の自動車をはじめとする製造業を中心とする産業政策を見直し、新たに国際競争力の高いハイテク産業を創出しようといった狙いがあり、それを地方で実現することで「産業の空洞化」問題にも対応する政策です。産業クラスター政策のモデルは、アメリカ発の「シリコンバレーモデル」です。

周知のとおり、シリコンバレーでは、AppleやGoogleなど、数多くのベンチャービジネスが誕生し、競争と協調により、IT分野でのイノベーションが起きました。日本でも、この「シリコンバレーモデル」を真似ようとしたのが、産業クラスター政策でした。約10年間、この政策は続けられましたが、シリコンバレーのような地域産業集積を日本で創ることは出来ませんでした。なぜ、日本では「シリコンバレーモデル」の実装に失敗したのか、地域におけるベンチャービジネスの輩出と新しい産業集積の形成条件とは何か、といった問題関心が私の研究の出発点となりました。

この研究がやりたくて社会人として大学院に入りました。約10年の研究を経て、2012年に博士論文としてまとめたのが、『日本的スピンオフ・ベンチャー創出論-新しい産業集積と実践コミュニティを事例とする実証研究』です。この研究成果は、書籍としても発行し、学会等で賞を受賞しました。本書では、日本らしいベンチャー輩出のモデルとして、元の職場を辞めて独立創業した「スピンオフ起業家」に注目しました。母体となる大企業とスピンオフ起業家とのWIN-WIN関係や、スピンオフ起業家の地域的な学習コミュニティといった事実発見を示しました。

現在の研究対象は、ベンチャービジネスに限らず、小さな起業家(マイクロアントレプレナー)にまで拡げています。地域の活性化についても、地域の経済成長だけではなく、住民の生活の質(QOL)の向上やウェルビーイングにつながる地域の非経済的な価値の方に目配りしています。子育て・教育や介護福祉、防犯やまちづくりなど、地域の多様な課題解決の担い手となる中小企業・コミュニティビジネス、アントレプレナー(起業家)に注目しています。こうした視点にもとづき、市区町村単位での先進事例を分析した研究成果は、『先進事例で学ぶ 地域経済論×中小企業論』として2020年に上梓しています。

『日本的スピンオフ・ベンチャー創出論-新しい産業集積と実践コミュニティを事例とする実証研究』(左 2012年)『先進事例で学ぶ 地域経済論×中小企業論』(右 2020年)

Q3:ゼミで行っている教育活動や学生の活動内容

私のゼミにおける活動テーマは「地域活性化とアントレプレナーシップ(起業活動)」です。市区町村単位での地域活性化を考えた際に、活動の中心人物となれるような主体性をもって行動できる学生を育成しています。そして、活動において常に心がけているのは、学生には研究のためにただ地域で取材や視察を行うだけでなく、最終的に地域に還元できるような活動にしてもらうことです。地域でインプットした後は、地方自治体や地元企業等に対する提案や報告書を提出するなどアウトプットとして、恩返しができるように進めています。

さらには、創業機運の醸成を狙っています。そもそも日本では、ベンチャービジネスやスタートアップという以前に、新規開業率が5%台で低く、起業無関心者層が国民の約7割を占めると言われています。学生の多くは、当たり前に就職活動をして、卒業後に勤め人となる。将来起業する、といったキャリアパスを念頭に置いていません。起業に無関心な学生に対しては、身近な起業家・小さな起業家(マイクロ・アントレプレナー)との日常的な接点を持ってもらうことが必要であると考えます。そこで私は、本学において「アントレプレナー交流会」などの環境を整備し、起業に対するハードルを下げ、起業家と親近感をもって交流できる地域プラットフォームづくりを世田谷区内で行っております。

長山ゼミのフィールドワーク。愛知県常滑市に於いて。テーマは、「焼き物産地の活性化」

Q4:地方創生やSDGsに取り組んでいる企業への応援メッセージ

中小企業は多様性があり、それと同時にそれぞれに固有性があることが特徴です。

企業様によってバックグラウンドが異なるため一言で表すのはなかなか難しいですが、この度Made In Localのアンバサダーに就任した私にできることであれば、積極的に協力させていただきたいと考えております。身近な範囲の地域の方々と協力して地域おこしにつながる事業を行いたい、ということであればぜひご相談ください。ゼミに所属している学生も、フィールドワークなどの活動を通してお手伝いできることがあるかもしれません。

また、このような活動を行うにあたって私が特に大切にしていることは地域の方々への敬意、そして感謝の気持ちを忘れないことです。私のゼミにおいても、ヒアリングは地域の方々から貴重な時間をいただいている、調査も地域の方々に学ばせていただいているというリスペクト精神をもって進めております。

こうした精神のもと、活動を続ける企業が増えることでより良い社会の創造は可能になると考えております。

長山ゼミのフィールドワーク。山梨県小菅村に於いて。テーマは、「村まるごと観光地」

Q5:Made In Localおよび地域を代表する企業100選への応援メッセージ

新型コロナウイルスのパンデミックや地震等の災害、少子高齢化と人口減少、物価高や人手不足など様々な問題があるこの時代において、企業として事業を継続していること、地域経済社会を支えていることににまずは、心から尊敬と敬意を表します。まずは、何よりも、経営者ご自身や自社の従業員とその家族の「ウェルビーイング(well-being)」の実現が重要です。そのうえで、これから先、「地方創生」ならびに「SDGs」に貢献していくためには、「利他」の精神にもとづき、顧客や取引先そして地域のマルチ・ステークホルダー全体のウェルビーイングの実現に向けた取り組みが重要なものとなるでしょう。ウェルビーイング経営を実践する地域企業のつながりは、地域の経済循環のみならず、地域社会の多様な人々の「幸循環」となり、持続可能な地域の発展に結実するものと思います。

これからも、ウェルビーイング視点を持って、「地方創生」および「SDGs」の活動に取り組んでいただきたいです。

駒澤大学経済学部に着任時(今から15年前の若かりし頃)の長山。「地域経済論」と「起業論/ベンチャービジネス論」を担当。

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